共同利用・共同研究「植物資源・ストレス科学研究拠点」プロジェクト 植物による東日本大震災被災農地の修復

本研究所は、「植物資源・ストレス科学研究拠点」として、オオムギ、イネ、野生植物等の遺伝資源を保有しています。オオムギは主要作物の中で最も塩害に強く、一方、野生植物の中には放射性セシウム(Cs)の高吸収植物種があるかもしれません。このような期待のもと、平成23年度に私達は、植物遺伝資源とその特性に関する情報を活用し、塩耐性や放射性Csの吸収機構によって、海水流入および放射性Cs汚染による被災農地を修復するためのプロジェクトを立ち上げました。本年度(平成24年度)は、これまでに行ったプロジェクト研究の成果を取りまとめるとともに、復興支援に向けた具体的な提案をするためのシンポジウムを予定しています。なお、本プロジェクトは、平成24年度岡山大学「大学機能強化戦略経費」の支援を受けて行っています。

プロジェクトの詳細は、次の通りです。

【プロジェクトの目的】
東日本大震災による津波およびそれに起因する原子力発電所事故による被災農地の環境を、植物遺伝資源を用いた植物ストレス科学的手法によって、修復することを目的とする。特に実験生物学的手法によって得られた成果を現地の展示圃場等で確認しながら被災農地の復興に向けた具体的な提案ができるようにする。

【実施計画・実施状況】
被災農地の修復に向け、本研究では、津波による塩害農地と放射性Cs汚染農地の二つを対象にし、各々、オオムギと野生植物を用いて取り組む。

I. 塩害農地の修復 (担当:佐藤和広、前川雅彦[資源植物科学研究所])
イネのみが作付けされている被災水田に、冬作物として塩害および湿害に強いオオムギを導入して環境修復を図る。このため、岡山大学で塩害および湿害環境を再現して、すでに各々の条件で選抜済みのオオムギ遺伝資源を冬期に栽培し、夏期にイネを栽培する。さらに、耐塩性を高める遺伝子を導入して、塩害および湿害条件でも生育可能な遺伝資源を開発する。
 これまでに、教員が現地に出向き、宮城県、栃木県の研究普及機関および農協などと協力して有望オオムギ系統の導入評価を進めているほか、東北大学とは耐塩性イネの選抜をしている。さらに、予備的にオオムギ系統のビール醸造用の品質調査を実施して、生産物の実用性の確認も進めている。

地盤沈下で湛水状態の仙台湾周辺農地

宮城県古川農業試験場での導入試験

 
II. 放射性セシウム汚染農地の修復 (担当:山下 純、榎本 敬、園田昌司、山本洋子[資源植物科学研究所]・小野俊郎、花房直志、山田雅夫[自然生命科学研究支援センター])
福島県飯舘村の農地で現地調査を行い、農地に生育する野生植物(いわゆる雑草)を植物種毎に土壌とともに収集し、植物体と土壌の放射性セシウム(Cs)量を測定することで、植物種毎に、放射性Csの土壌から植物への移行率を求める。さらに、生育特性、バイオマス、農地管理の面からも検討し、農地から放射性Csを除去する目的に適した植物種を提案する。放射性Csの移行率の高い植物種については、移行機構を解析する。本プロジェクトにおいて、野生植物の収集には、当研究所に所属する植物分類の専門家二名が当たる。一方、放射性Csの測定にはゲルマニウム半導体検出器を用いた正確な測定が必要であり、岡山大学自然生命科学研究支援センターに所属する放射化学の専門家が担当する。
 これまでに、飯舘村には、平成24年2月に予備調査に出向き、その後、4月、7月、10月と3回の本調査を行った。村内4箇所の調査地から50種以上の耕地雑草について放射性Csの移行率を測定したほか、イメージング解析によって植物部位ごとの放射能集積の偏りの測定を行っている。また、除染の助けとなる休耕地の植生管理方法について現在検討中である。

Ge半導体検出器の放射線測定画面

福島県飯舘村の汚染農地の雑草群落

 
 
【シンポジウムの開催予定】
これらの研究成果をもとに、被災農地の復興に向けた具体的な提案ができるようにするために、東北地方の復興担当者の方をお招きしてプロジェクトの現状と方向性を議論するシンポジウム「植物による東日本大震災被災農地の修復」を、2013年2月14日に予定しています。多くの方のご参加をお待ちしております。

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