目立たないパルティティウイルスの最近の研究の進歩と分類体系の再構築

[著者] Nibert, M. L., Said A. Ghabrial, S. A., Maiss, E., Lesker, T., Vainio, E. J., Jiang, D. Nobuhiro Suzuki,N.

[論文タイトル] Taxonomic reorganization of family Partitiviridae and other recent progress in partitivirus research.

[掲載論文] Virus Research 188, 128-141. doi.org/10.1016/j.virusres.2014.04.007

[使用した共通機器] 超遠心機、DNAシークエンサー

[内容紹介] 菌類ウイルスの研究者人口が増えてきたとは言え、未だ少なく、細々と研究しているグループが殆どです。研究対象である菌類ウイルスも人目につくことは稀で、目立たない存在と言えます。中でも、パルティティウイルスは、宿主に病気を引き起こすことが稀で、目立たないウイルスの代表格です。この総説では、この一群のウイルスの分類体系と最近の研究成果を紹介しました。パルティティウイルスは最も単純なウイルスグループの一つです。ゲノムは2本の分節型2本鎖RNAから成り、それぞれがキャプシド蛋白質とRNA合成酵素をコードします。ゲノムサイズも2つあわせても3 kbpから5 kbpに収まります。パルティティウイルスの宿主は、植物、菌類、原生生物に分かれます。原生生物からはこれまで1種類のウイルス(cryspovirus)しか報告されていませんが、植物あるいは菌類からは普遍的に見つかっています。前述のように、植物、菌類宿主では無病徴感染する例が殆どですが、菌類から見つかったウイルスの数例で宿主のコロニー性状を変えることが報告されています。これまでの分類は、宿主と粒子サイズに基づいていました。しかし、最近のパルティティウイルスのゲノム配列の分子系統解析結果から、5つクレードに分かれることが明らかとなりました。それらが新たな5つの属(Alpha- Beta- Gamma- Deltapartitivirus, Cryspovirus)を形成するという提案がこの4月に国際ウイルス分類委員会で承認されました。興味深いのは、Alphapartitivirus属、Betapartitivirus属には植物および菌類のパルティティウイルスが同居します。一つの科に植物ウイルスと菌類ウイルスがふくまれることはよくあることですが、一つの属にそれらが存在する例は極めて稀です。系統解析の結果は、未だ証明されていませんが両宿主で水平伝搬が起きていることを強く示唆します。本総説ではさらに、最近明らかになったメタゲノム解析、データベースからの発掘により明らかにされたパルティティウイルスゲノム、パルティティウイルスゲノムの植物ゲノムへの水平伝搬、原子レベルでの粒子構造解析、さらにはパルティティウイルスと類似の菌類ウイルス、植物ウイルスについて概説した。また、最後にパルティティウイルスにまつわる残された疑問も議論しました。
これを読むことでパルティティウイルス研究の現状と将来が理解でき、あなたもパルティティウイルスの専門家になれます。(文責:鈴木信弘)

お問い合わせ先:植物・微生物相互作用グループ・鈴木信弘