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気孔が閉じるとき.フォスポリパーゼの役割を解明

気孔が閉じるとき.フォスポリパーゼの役割を解明

[著者] Misugi Uraji, Takeshi Katagiri, Eiji Okuma, Wenxiu Ye, Mohammad Anowar Hossain, Choji Masuda, Aya Miura, Yoshimasa Nakamura, Izumi C. Mori, Kazuo Shinozaki, and Yoshiyuki Murata

[論文タイトル] Cooperative Function of PLDδ and PLDα1 in Abscisic Acid-Induced Stomatal Closure in Arabidopsis

[掲載論文] Plant Physiology (2012), 159: 450-460

[共同研究] 理研、岡山大学農学部

[使用した共通機器] MALDI-TOF

[内容紹介]
気孔は植物の生存のために二酸化炭素を供給し,体内の水代謝を司る極めて重要な器官です.この気孔は乾燥ストレス時には閉口しますが,このときアブシシン 酸という植物ホルモンが乾燥ストレスの情報を司っており,世界中で,気孔のアブシシン酸応答メカニズムの研究が盛んに進められています.
この研究では細胞の脂質代謝に重要な酵素フォスフォリパーゼDが気孔のアブシシン酸応答に重要な働きをしていることを発見し,報告しました.フォスフォリ パーゼ遺伝子はシロイヌナズナという植物に複数存在しますが,そのうち気孔が閉じる際にはPLDα1とPLDδのふたつが機能しており,どちらかひとつが 機能しなくとも気孔の閉口には問題がないことが分かりました.ところが面白いことに,アブシシン酸が気孔の開口を抑制するためにはPLDα1のみが関与す ることが分かりました.
アブシシン酸の応答は長年複雑だと信じられていましたが,近年の遺伝学の発展によりそれは実は簡単である,と考えられるようになってきました.ところが私 たちの研究から,アブシシン酸が気孔閉口を誘導するのと気孔開口を阻害するのでは,関与する酵素が一部は共通で一部は異なる,最近の学説のように単純なも のではなく,詳細な酵素の使い分けがあるという大変興味深い事実が理解できます.
(文責 環境応答機構研究グループ・森 泉)

関連リンク: 環境応答機構研究グループ

研究者になるつもりじゃなかったのに ただいま気孔の研究中 環境応答機構研究グループ 助教 森先生

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