花粉で核以外のDNAが分解する現象を明らかにしました

[著者] Tang, L.Y., Matsushima, R., and Sakamoto, W.

[論文タイトル] Mutations defective in ribonucleotide reductase activity interfere with pollen plastid DNA degradation mediated by DPD1 exonuclease

[掲載論文] The Plant Journal 70 (4): 637-649

[使用した共通機器] 走査型電子顕微鏡、シーケンサー

[内容紹介]
植物の細胞内にある小器官(オルガネラ)の中で、葉緑体とミトコンドリア はバクテリアの細胞内共生に由来します。その痕跡として、両者のオルガネラは、バクテリア由来のDNAを未だに持っています。これらのオルガネラDNAは 生命の維持に必要な遺伝子を持っていますが、オルガネラの研究だけでなく、生物の系統進化を解析したり、農業でもハイブリッド育種などに使われたりしてい ます。
私たちはこれまでに、シロイヌナズナというモデル植物を使い、植物の花粉でオルガネラDNAが普遍的に分解されるメカニズムを発見しました。花粉では DPD1という被子植物だけにある酵素がはたらき、オルガネラのDNAを分解しています。今回の論文では、このDPD1によるDNA分解が細胞内の核酸合 成に関係していることをDNA分解が進まなくなった突然変異体を通して明らかにしました。核酸の新規合成とオルガネラDNAの分解が関係することは、オル ガネラDNAが必要に応じて分解されて再利用されている可能性を示しており、花粉でのオルガネラDNAが有機物の再利用として使われているという大胆な仮 説にもつながります。オルガネラDNAは母親(卵細胞)から伝わるので、父親(花粉)では最終的に不必要になるので有効利用されているのかもしれません。オルガネラDNAは植物の生育にとって必須の遺伝情報ですが、ゲノムコピーがたくさんあるので、一部は分解されても生育が可能のようです。DNAの分解を 制御することで、オルガネラDNAの遺伝を変えたり、必要に応じて分解させることで生育をコントロールする研究にも発展するかもしれません。
(文責 光環境適応研究グループ・坂本 亘)

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植物の生長を支える葉緑体と光合成・植物オルガネラ研究のパイオニアを目指して 光環境適応研究グループ 教授 坂本先生