「小麦色」は「バラ色」と同じ遺伝子で作られていることがわかりました

[著者] Himi E, Maekawa M, Noda K.

[タイトル] Differential Expression of Three Flavanone 3-Hydroxylase Genes in Grains and Coleoptiles of Wheat

[掲載誌] International Journal of Plant Genomics (2011), Article ID 369460
http://www.hindawi.com/journals/ijpg/2011/369460/

[共同利用機器] DNAシークエンサー

[内容紹介]  「小麦色」とは「コムギの種子のようなつやのある薄茶色」を意味しています。コムギをひいて粉にするときに残る皮の部分を「ふすま」といい、この部分に色素は多く含まれています。そのため、パンやうどんなどを作るときに使う小麦粉は白いのです。
この「小麦色」の色素については、1958年に日本人研究者の宮本らがカテキンやタンニンの誘導体であるフロバフェンや縮合タンニンではないかと推定し たことを始めとして多くの実験が行われ、近年での色素分析により、コムギの種子色素は縮合タンニンであると考えられています。フロバフェンおよび縮合タン ニンはどちらもアントシアニンと同じフラボノイド系の色素です。これらの色素を作るにはさまざまな酵素が必要です(図1)。この中にはカルコン合成酵素 (CHS)、カルコン異性化酵素(CHI)、ジヒドロフラボノール4-還元酵素(DFR)といった、フロバフェン、アントシアニン、縮合タンニン全ての色 素を作るのに共通に必要な酵素があります。一方で、フラバノン3-水酸化酵素(F3H)のように、アントシアニンおよび縮合タンニンの合成には必要であっ ても、フロバフェン合成には必要のない酵素もあります。
我々はコムギからこのF3Hをコードする遺伝子を単離したところ、コムギのF3H遺伝子は、コムギの2A, 2B, 2D染色体の長腕末端にそれぞれ1コピーずつ座乗していることが分かりました。そこでそれぞれのF3H遺伝子をF3H-A1, F3H-B1, F3H-D1と名付けました。次に、これらの遺伝子について、色素の濃い(赤い)種子と色素の薄い(白い)種子、さらにアントシアニンを合成している赤い子葉鞘とアントシアニンを合成していない白い子葉鞘を使って発現を調べました。その結果、赤い子葉鞘と赤い種子ではF3H遺伝子は全て強く発現していたのに対し、白い子葉鞘と白い種子ではF3H遺伝子の発現は抑えられていました。このことから、コムギのF3H遺伝子は子葉鞘のアントシアニン合成に必要なだけでなく、種子の色素合成にも必要なことが分かりました。この結果は、近年の実験により示された「コムギの種子色素はフロバフェンではなく縮合タンニンである」という結果と一致しています。
アントシアニンはブルーベリーを始めとする植物の実や、バラ、ペチュニア、アジサイなどの花の色の主成分です。今回の実験結果から、「バラ色」であるアントシアニンと、「小麦色」である縮合タンニンを作るには、同じF3H遺伝子が必要であることが分かりました。(文責:ゲノム制御グループ 氷見).

 

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