気孔の運動にはカタラーゼが関与します

[著者] Rayhanur Jannat, Misugi Uraji , Miho Morofuji , Mohammad Muzahidul Islama, Rachel E. Bloomc, Yoshimasa Nakamura, C. Robertson McClung, Julian I. Schroeder, Izumi C. Mori, Yoshiyuki Murata

[タイトル] Roles of intracellular hydrogen peroxide accumulation in abscisic acid signaling in Arabidopsis guard cells

[掲載誌]  J. Plant Physiol.(2011), 168: 1919-1926.

[共同研究] 岡山大学大学院資源科学研究科,ダートマス大学(米国),カリフォルニア大学サンディエゴ(米国)

[内容紹介]  カタラーゼは古くからよく知られる酵素の一つで,細胞内の過酸化水素を水と酸素に分解することによって,細胞の酸化傷害を緩和していると考えられています.
一方,近年,過酸化水素が毒素としてはなく細胞の環境刺激認識に重要な役割を果たす細胞内信号伝達分子のひとつとして機能すると考えられるようになって きました.これまでに,様々な環境ストレスに応答した気孔閉口の過程で,孔辺細胞内での過酸化水素シグナルや活性酸素種シグナルの役割の解析が進んできま したが,その信号分子の実態がスーパーオキシドアニオンラジカルである,ヒドロキシラジカルである,いやいや過酸化水素であるなど,様々なモデルが提唱さ れ,現在にいたっています.
この研究では細胞内の過酸化水素の分解だけに作用する内在性酵素であるカタラーゼの(1)活性阻害剤および(2)カタラーゼ遺伝子の機能欠損突然変異体 を利用することで,アブシジン酸誘導性気孔閉口にカタラーゼによって分解される過酸化水素が信号伝達に重要な役割をしていることを証明しました.
さらに,同じ孔辺細胞内に蓄積する過酸化水素といえども,その時間的および空間的な違いにより,気孔閉口を誘導するメッセージを持つ過酸化水素と,気孔閉口を誘導しない過酸化水素の蓄積の少なくとも2パターンがあることが示唆されました.
このことは,暗に活性酸素信号伝達には特殊なメッセージを持つ時空間的に分化したシグネチャ(符号)がある可能性を示しており,今後の植物細胞の環境認 識のメカニズムを考える上で重要な意味を持つと考えられます.(文責 環境応答機構研究グループ 森 泉)

 

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環境応答機構研究グループ
研究者になるつもりじゃなかったのに ただいま気孔の研究中 環境応答機構研究グループ 助教 森先生