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麦ごはんはいかがですか?

[著者] Himi E, Yamashita Y, Haruyama N, Yanagisawa T, Maekawa M, Taketa S.

[タイトル] Ant28 gene for proanthocyanidin synthesis encoding the R2R3 MYB domain protein (Hvmyb10) highly affects grain dormancy in barley

[掲載誌] Euphytica(2011) DOI: 10.1007/s10681-011-0552-5
http://www.springerlink.com/content/w2848832h1m35163/

[共同研究] 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所・柳沢貴司博士および栃木県農業試験場・春山直人博士との共同研究

[共同利用機器] DNAシークエンサー

内容紹介]  食物繊維は、糖質・脂質・タンパク質・ミネラル・ビタミンからなる「5大栄養素」に次ぐ「第6の栄養素」と言われ、胃腸での消化・吸収を助けたり、コレス テロールや有害物質を排出する機能などがあります。そのため食物繊維が不足すると、生活習慣病や大腸癌などの病気を引き起こす一因ともなると言われていま す。
オオムギには、この食物繊維が豊富に含まれ、しかも「水溶性」「不溶性」の量的なバランスがとれていることから、オオムギをお米に混ぜて炊く麦ごはんの摂 取がのぞまれています。しかしながらオオムギの穀粒はプロアントシアニジンなどのポリフェノール類を含み、炊飯後に褐変化して色合いが悪くなることから麦 ごはんは敬遠されてきました。
本実験ではこのプロアントシアニジンを含まない突然変異体(ant28突然変異体)に着目し、Ant28遺伝子はプロアントシアニジンの合成を制御してい るMYB系の転写制御因子であることを解明しました。このAnt28遺伝子は、植物のMYB遺伝子に特徴的なR2R3というMYBリピートと、他の植物の プロアントシアニジン制御遺伝子と共通のIRTKAL/IRCモチーフを有し、3H染色体長腕の末端近傍に座乗していることがわかりました。また Ant28遺伝子は未熟種子で発現しており、プロアントシアニジン合成は種子発達初期に行われていることが明らかになりました(図1)。
近年、このプロアントシアニジンを含まない突然変異体(ant28突然変異体)を利用して、プロアントシアニジン欠失品種が複数育成されています。これら の品種の麦ごはんは炊飯後も色が悪くならず、一方で食物繊維は変わらず豊富であることから、今後の健康食としての需要が期待されます。(文責:ゲノム制御 グループ 氷見).


図1 発達種子のプロアントシアニジン
a. ant28遺伝子の突然変異体(ant28-494)とその原品種Catrinの開花後(DAP)5, 10. 15, 20, 25日目の種子。開花後20日目までは緑色ですが、25日目からやや黄色くなります。
b. 同じ種子をバニリン塩酸染色したもの。プロアントシアニジンはバニリン塩酸と反応して赤茶色になります。開花後10日のCatrinの種子は赤茶色に染 まっていることから、肉眼では緑色の種子でも実際の種子の中ではプロアントシアニジン合成が起こっていることが分かります。

関連リンク

▶ ゲノム制御グループ

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