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ジャスモン酸メチルによる気孔閉口をカタラーゼが制御する

[著者] Jannat, R., Uraji, M., Hossain, M.A., Islam, M.M., Nakamura, Y., Mori, I.C., and Murata, Y.

[論文タイトル] Catalases negatively regulate methyl jasmonate signaling in guard cells

[掲載論文] J. Plant Physiol. (2012), 169: 1012-1016.

[共同研究] 岡山大学大学院環境生命科学研究科

[内容紹介]
気孔は根からの養分の吸収や光合成のための二酸化炭素の吸収など植物の「食」に密接した重要な器官です.また,気孔の穴は病原菌の侵入経路として使われることもあります.植物の気孔は自らの「食」,「健康」のために気孔の開度を上手に変化させて生きています.
気孔を取り囲む孔辺細胞(guard cells)は光・温度・水分などの非生物的な環境ストレスと病原菌の付着・侵入などの生物的な環境ストレスの情報を総合的に認識して,気孔開度を調節します.この過程における信号統合の分子メカニズムの解明に関する研究が近年たいへん注目を浴びています.孔辺細胞ではたったひとつの細胞の中に,あたかも中枢神経があるかのごとく,情報を処理していると思われるのです.そのなかでも特にカルシウムと活性酸素種の役割が注目されています.
生物的ストレスに対して植物はサリチル酸やジャスモン酸類を合成することで,植物の各器官での防御応答を引き起こすと考えられています.この研究では,非生物的ストレスに関与するアブシシン酸と,生物的ストレスに関与するジャスモン酸メチル(methyl jasmonate)の応答において,過酸化水素がどのような役割をしているのか明らかにするために,過酸化水素分解酵素であるカタラーゼ(catalase)遺伝子の欠損変異体を使って気孔運動を解析した.
実験結果により,細胞内の誘導性過酸化水素発生がジャスモン酸メチル信号の伝達に関与すること,またカルシウムシグナルとは独立して機能していることが示唆されました.
(文責 環境応答機構研究グループ・森 泉)

関連リンク: 環境応答機構研究グループ

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