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根におけるウイルス-宿主鬩ぎ合いの一端を明らかにしました。

[著者] Ida Bagus Andika, Kazuyuki Maruyama, Liying Sun, Hideki Kondo, Tetsuo Tamada,  Nobuhiro Suzuki

[論文タイトル] Differential contributions of plant Dicer-like proteins to antiviral defences against potato virus X in leaves and roots

[掲載論文] Plant Journal 81, 781-793 (2015)

[内容紹介] 植物の根は、土を介して媒介される多くの土壌伝染性ウイルスの感染現場として重要です。しかし、宿主の抗ウイルス機構であるRNAサイレンシングが具体的に根でどのように貢献しているかはこれまで不明でした。本研究では、RNAサイレンシングの鍵酵素であるDicer-like protein (DCL)の根における役割に注目し、根における抗ウイルス機構の一端に迫りました。ジャガイモXウイルス(PVX)は野生タバコ(Nicotiana benthamiana)やナス科植物に全身感染しますが、根ではRNAサイレンシングでPVXの複製が抑制されます。そこで、野生タバコのDCLホモログ(NtDCL2-4)を解析したところ、NtDCL4が根におけるPVXの抑制に関与することが判明しました。一方、非宿主と考えられてきたシロイヌナズナでは、葉におけるPVXの複製をAtDCL4が抑制し、さらにPVXの地上部や根への全身移行には、AtDCL4に加えAtDCL2も貢献することが判明しました。以上から、根におけるPVXの抑制には、葉に比べるとより多くのDCL種が関与し、さらに冗長的に機能する可能性も示唆されました。本成果は、根におけるウイルス–宿主間の鬩ぎ合いを理解する端緒になり、土壌伝染性ウイルスに対する抵抗性作物を創成する上で重要な知見になると期待されます。
(文 責:近藤秀樹)

お問い合わせ先:植物・微生物相互作用グループ

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