コメのヒ素蓄積を抑制する輸送体遺伝子OsABCC1

[著者] Song, W. Y., Yamaki, T., Yamaji, N., Ko, D., Jung, K. H., Fujii-Kashino, M., An, G., Martinoia, E., Lee, Y. and Ma, J. F.

[タイトル] A rice ABC transporter, OsABCC1, reduces arsenic accumulation in the grain.

[掲載誌] Proc Natl Acad Sci USA 111: 15699-15704 (2014).

[内容紹介]

ヒ素(As)は極めて毒性の強い元素で、急性毒性だけでなく、微量でも継続的に摂取することによって慢性毒性を生じます。イネは他の穀物に比べヒ素を蓄積しやすい性質があり、また日本を始めアジア各国の主食でもあることから、コメからのヒ素摂取が総摂取量の多くの割合を占めています。また、バングラデシュやインド西ベンガル地方など世界の一部の地域では地下水中に比較的高濃度のヒ素が含まれており、その地下水を灌漑に用いたことで、コメをはじめとする農作物のヒ素汚染が非常に大きな問題となっています。従って、コメ中のヒ素を低減させることは健康上非常に重要な課題です。我々はイネのヒ素集積機構について研究を行い、これまでにイネは土壌中の亜ヒ酸をケイ酸輸送体Lsi1とLsi2を介して吸収することを明らかにしきました。本研究では、イネの節で発現するOsABCC1輸送体タンパク質がコメ穀粒へのヒ素の蓄積を抑制する働きがあることを突き止めました。

OsABCC1輸送体タンパク質はイネの細胞の液胞膜上に局在し、維管束の篩管に隣接する篩部伴細胞を中心にイネの全身で構成的に発現しますが、特に発達した維管束が集中する節において多く見られます。イネは篩部伴細胞の液胞へとヒ素を隔離することで、篩管を通って穀粒へと運ばれるヒ素の転流を効果的に抑制します。この働きにより、玄米中のヒ素蓄積は、OsABCC1遺伝子が壊れた変異体イネに比べて正常なイネでは13〜18分の1に減少しました。この仕組みを応用し、より働きを高めることで、ヒ素蓄積の少ないより安全なイネ品種の開発につながると期待されます。

(文責 植物ストレス学グループ・馬 建鋒)