葉緑体の膜保護機能とVIPP1タンパク質について

[著者] Lingang Zhang and Wataru Sakamoto

[論文タイトル] Possible function of VIPP1 in maintaining chloroplast membranes

[掲載論文] Biochimica et Biophysica Acta 1847: 831-837 (2015)

[共同研究] CREST(戦略的創造研究推進事業)

[使用した共通機器] 光合成蒸散測定装置、共焦点レーザー走査型顕微鏡、DNAシーケンサ

[内容紹介]

光合成生物にはVIPP1タンパク質と呼ばれるタンパク質が広く存在することが知られています。その保存性と、突然変異体の解析から、VIPP1は、光合成の光エネルギー転換反応を担う光合成装置を内包している「チラコイド膜」の形成に必要なタンパク質であると考えられてきました。ところが、VIPP1タンパク質は葉緑体を包みこむ膜(包膜)に多く存在しており、チラコイド膜形成だけでなく様々な膜機能に関与することが推測されました。最近の我々の研究から、VIPP1は内包膜がうけるストレスに応答して膜を維持させるための役割を持つことを明らかにしています。今回の総説では、これまで報告されたVIPP1タンパク質の機能について概説するとともに、その構造的な特徴から膜(脂質)との結合性、脂質輸送機能について推察し、VIPP1が膜の修復を促す役割について検討しています。

葉緑体で行われる光エネルギー転換反応には、光合成装置だけでなく、膜を介した電位ポテンシャル、プロトン駆動力の維持が必要です。葉緑体の膜ポテンシャルを保つために光合成生物はVIPP1タンパク質を発達させたと考えられており、葉緑体ストレス応答の新たな側面を明らかにする研究が期待されます。

(文責:坂本 亘)

関連リンク: 光環境適応研究グループ