シュンランに発生する新規ウイルスの性状を明らかにしました.

[著者] Kondo, H., Takemoto, S., Maruyama, K., Chiba, S., Andika, I.B. and Suzuki, N.

[論文タイトル] Cymbidium chlorotic mosaic virus, a new sobemovirus isolated from a spring orchid (Cymbidium goeringii) in Japan

[掲載論文] Archives of Virology 160, 2099-2104 (2015)

[使用した共通機器] 透過型電子顕微鏡,超遠心分離機,DNAシークエンサー

[内容紹介]

ラン科植物は美しい花を咲かせることから,皆さん良くご存じだと思います.しかし,野生のラン科植物では,乱獲や生育環境の変化(破壊)で個体数が減少し,絶滅に瀕している種も少なくありません.一般に,ウイルス病はランを栽培する上で大敵ですが,稀少ランや自生ランなどの増殖や個体維持においてもウイルス感染は避けて通れない問題です.シンビジュウム属のシュンラン(春蘭,Cymbidium goeringii)はわが国や中国・韓国などに自生しますが,その栽培株で葉の退緑斑や株の萎縮症状を引き起こす球状ウイルス(粒子経約28nm)の発生が知られていました.このウイルスは,宿主範囲が非常に狭く,シンビジュウム属にのみ感染が知られており,その症状からシュンラン退緑班ウイルス (Cymbidium chlorotic mosaic virus, CyCMV)と命名されています.本研究では,CyCMV分離株の分子生物学的な特徴付を行いました.その結果,ウイルス粒子は,4,083塩基からなる一本鎖RNAゲノムとそれを包含する約30kDaの外被蛋白質で構成されていることがわかりました.そのゲノム構造とコードされる遺伝子の相同性検索並びに分子系統解析の結果から,CyCMVはソベモウイルス属の新たなメンバー(新種)であることが判明しました.なお,単子葉植物のソベモウイルスは、イネ科植物以外ではラン科植物が初めてとなります.また,得られた成果は,ウイルス病の遺伝子診断や発生生態の調査を進める上で有益な情報となります.

(文 責:近藤秀樹)

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