ダイサー遺伝子の発現誘導で活性化されたRNAサイレンシングによる別種ウイルス間の干渉効果

[著者] Chiba, S., and Suzuki, N.

[論文タイトル] Highly activated RNA silencing via strong induction of dicer by one virus can interfere with the replication of an unrelated virus

[掲載論文] Proceedings of the National Academy of Science, U S A 112, E4911–E4918. DOI:10.1073/pnas.1509151112. PNAS Plus.

[使用した共通機器] 超遠心機、DNAシークエンサー

[内容紹介]

ウイルス学での干渉とは、複数のウイルス間でおこる複製阻害のことです。通常、1種類のウイルスの異なる系統間でおこる現象です。強毒系統の複製と病徴発現を弱毒系統による干渉効果で抑制できることはよく知られており、弱毒系統をワクチン系統(微生物農薬)として商品化されています。干渉作用には、RNAサイレンシングが関与することが報告されています。RNAサイレンシングは、酵母からほ乳動物まで広く保存されている抗ウイルス防御反応の一種です。ウイルス由来の2本鎖(ds)RNAがDicer(様)dsRNA分解酵素により、21-26残基によって分解され、片方の鎖がAGO様1本鎖(ss)RNA分解酵素を主成分とするエフェクターに取り込まれ、ガイド役となり、標的分子の分解を導きます。本研究では、モデル糸状菌宿主であるクリ胴枯病菌を舞台で繰り広げられる異種ウイルス間で起こる干渉作用を紹介しました。尚、クリ胴枯病菌では、aglの遺伝子が4個、dclが2個ありますが、ウイルス防御に関与するのはagl2とdcl2のみであります。植物などで報告されているRNA依存RNA合成酵素の関与は認められていません。

私たちは、クリ胴枯病菌に様々なウイルスを感染させる技術を確立し、宿主・ウイルス間の相互作用を研究してきました。特に、RNAサイレンシングとウイルスの攻防は研究室の大きなテーマの一つです。その過程で非分節型dsRNAウイルスの一種であるRosellinia necatrix victorivirus 1 (RnVV1) が、RNAサイレンシング抑制蛋白質を欠損した(+)ssRNAウイルス、Cryphnectria parasitica 1 (CHV1-Dp69)あるいは12本の分節セグメントをゲノムにもつmycorevirus 1(MyRV1)により干渉作用を強く受けることが示されました。すなわち、干渉効果を持つウイルスが予め感染しているとRnVV1が水平伝染も複製もできなくなります。また、予めRnVV1が感染している菌に干渉作用をもつウイルスが侵入してくると、RnVV1の複製ができなくなり宿主から除去(ウイルスクリアランス)されました。これらの干渉にはdcl2, agl2の転写レベルの亢進が伴っていました。dcl2, agl2の転写レベルの亢進と干渉効果の関係をさらに調べるために、ウイルスに非感染でdcl2, agl2の亢進が認められる内在性遺伝子のヘアピンを発現する形質転体を作成しました。その形質転換体でもRnVV1に対する複製阻害が認められました。また、興味深いことに、干渉にはDCL2は必須であるが、AGL2は必ずしも必要ではないことが明らかとなりました。

本研究は、ゲノム塩基配列に左右されない広範囲のウイルス制御技術を考える上で大きな示唆を与えます。

(文 責:鈴木信弘)

お問い合わせ先:植物・微生物相互作用グループ