[種子の収集保存活動]

岡山大学資源生物科学研究所では,近藤萬太郎による農林種子の収集,高橋隆平による大麦の収集,笠原安夫による雑草種子の収集などが長年にわたって続けられてきました。1997年4月に当研究所に大麦・野生植物資源研究センターが発足しました。

人類の生活を支えているすべての作物の起源が野生植物であるということは,よく知られています。科学技術は日進月歩していますが,遠い将来においても人類の食糧は作物によって供給されると思われます。さまざまな生物が絶滅したり,絶滅の危機に瀕しています。遺伝子工学などが急速に進歩したとしても将来,絶滅した生物が復元される可能性はほとんどないと言われています。したがって,絶滅の危機に瀕している生物を保護することはきわめて重要ですが,それに優るとも劣らない重要性を持つのが,現在知られている植物の遺伝子を生きた状態で保存することです。生物全体が分かっていない現状で生物多様性を保存するにはそこの生態系そのものを保存することがもっとも重要かつ確実です。その努力を重ねる一方で,今すぐに,すべての高等植物の種子を生存した状態で保存することが重要であると考え、収集保存活動を開始しました。

当研究所では雑草に重点をお いて種子の収集と保存を行って来ました。日本の雑草種に関してはほとんどの種類の種子を収集し保存しておりますが,量的にも質的にも十分とは言えません。これからは収集保存する対象を野生種全体に広げたいと思っております。まずはありふれた普通種と呼ばれるものに重点をおいて収集保存を開始しています。もちろん,希少種や絶滅危惧種も入手できたものは保存しております。少ないスタッフと予算で運営しておりますので,皆様方のご協力無しには十分な活動が展開できません。ありふれた種類の種子,あるいは開発にあって絶滅してしまう希少種の種子などどのような種類のものでも結構ですので,お送りください。保存法が未解決で保存できない種類もありますが,できるかぎり,安全に保存させていただきたいと思っております。すでに収集できている種類であっても,産地などが異なりますと重要ですので,重複は気にせずにお送りください。



[種子の送付方法など]

種子の保存はその種子を採取した植物の 押し葉標本とともに保存するのが理想です。できれば,新聞紙に挟んだ押し葉標本とともにお送りください。多くの植物では完熟した種子ができる頃には,植物体が枯れかけていることが多いのですが,それでもかまいません。種子を選別したりしていただく必要はありません。生乾きの穂のままで結構ですので,お送りください。種子だけでは同定に困ることも多いので,なるべく穂や葉などとともに保存しております。郵送いただいた場合にだけ,その送料分を切手でお返しできます。それ以上のお礼はいたしかねますのでご容赦ください。

種子を利用していただくことも可能ですが,労力不足のため,栽培,増殖ができませんので,当面は研究者の方に少量配布させていただきます。大部分の種に関しては発芽テストも行えない状態ですので,発芽率が低い場合もあります。保存されている種子や遺伝子の利用の可能性は衣食住を始め,医療,福祉などあらゆる場面が考えられます。種子をご利用いただき,研究報告などが出版されるようでしたら,岡山大学 資源生物科学研究所の種子を使用したことを書き添えてください。栽培増殖された場合は種子を返送いただけると助かります。また,発芽率や気づいたこともお知らせください。

長い年月をかける仕事ですので,急ぎませんが,よろしくお願いいたします。



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