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植物染色体に挿入された非レトロRNAウイルスの化石配列

[著者] Chiba, S.*, Kondo, H.*, Tani, A., Saisho, D., Sakamoto, W., Kanematsu, S., and Suzuki, N.

[タイトル] Widespread endogenization of genome sequences of non-retroviral RNA viruses into plant genomes.

[掲載誌] PLoS Pathogens(2011) 7: e1002146.doi:10.1371/journal.ppat.1002146. Selected as a “Featured Research” article. (* contributed equally)

[共同研究] 果樹研、兼松博士

内容紹介]  DNAウイルス、レトロRNAウイルスや類似のパラレトロウイルス(逆転写酵素をもつDNAウイルス)の配列が宿主の染色体に挿入される現象はよく知られ ていましたが、非レトロRNAウイルス配列(NRVS)は挿入されないと考えられていました。我々は,白紋羽病菌から分離された新規2本鎖RNAウイルス (パルティティウイルス科、非レトロRNAウイルス)の性状解析の過程で,パルティティウイルスの外被蛋白質遺伝子の類似配列が少なくとも9科に及ぶ植物 のゲノム上に存在することを発見しました。さらにNRVSの探索を進めた結果,マイナス鎖RNA ウイルス(ラブドウイルス科とバリコサウイルス属)およびプラス鎖RNAウイルス(ベータフレキシウイルス科)類似の配列が主要な科(アブラナ科、ナス 科、イネ科、マメ科など)の核ゲノム配列データベース中に見つかりました。これらNRVSの多くはゲノミックPCRとサザン解析により植物染色体上に存在 することが確認されました。各種植物での保存パターンと系統解析により,これらの核ゲノム上のNRVSはウイルスから植物へ水平伝搬したことが示唆されま した。また、NRVSはこれまで不明であった植物種の系統関係を明らかにするのに、さらには核ゲノム配列を構成する要素として注目に値します。一連の研究 で見いだされた植物および菌類RNAウイルスに類似したNRVSは,植物およびウイルスの進化,植物/ウイルス相互作用、共進化の一端をひもとく上で有効 な情報になると期待されます。今後はNRVSの発現、機能解析を進める必要があります。本論文は掲載号の“Featured Research”に選ばれました。本研究は、所内(最相博士、坂本博士)および所外(果樹研、兼松博士)共同研究として行われました。(文責:鈴木)。

 

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