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イネ籾殻へのケイ素分配の仕組み

[著者] Yamaji, N., Sakurai, G., Mitani-Ueno, N. and Ma, J. F.

[タイトル] Orchestration of three transporters and distinct vascular structures in node for intervascular transfer of silicon in rice.

[掲載誌] Proc Natl Acad Sci USA doi/10.1073/pnas.1508987112 (2015)

[内容紹介] イネはケイ素を集積する形質があり、特に籾殻には10%以上のケイ素が沈着します。この沈着は、高温や乾燥、倒伏などの非生物的ストレスや、害虫や病原菌などの生物的ストレスからイネを守り、イネの安定多収に必要不可欠です。本研究では、蒸散の多い葉よりも、蒸散の少ない籾殻に優先的にケイ素を分配するためには、節で発現する三つの輸送体に加え、肥大維管束の肥大やバリアーなどの節の構造が必要であることを明らかにしました。
三つの輸送体は節において異なる細胞層に局在しています。Lsi6は肥大維管束周縁部の“木部転送細胞”の導管に面した側面に、Lsi2は肥大維管束を包む細胞層“維管束鞘”の外側面に、Lsi3は肥大維管束と分散維管束の間の複数の細胞層に発現していました。すなわち、葉へと続く肥大維管束の導管にケイ酸を含む蒸散流が流れ込むと、①まずLsi6によって選択的にケイ酸が木部転送細胞に取り込まれ、②続いてLsi2とLsi3によって、上の節や穂へと続く分散維管束の導管に再び積み込まれる、ケイ酸の“維管束間輸送”が行われていると考えられました。実際に、Lsi6、Lsi2、Lsi3の機能が失われた変異イネはいずれも、葉へのケイ素の分配が多くなり、穂への分配が少なくなりました
さらに本研究では、農業環境技術研究所の櫻井玄研究員との共同研究により、数理モデルを構築し、肥大維管束の肥大による蒸散流の減速、木部転送細胞のひだ状構造による表面積と輸送体発現の増加なども、効率的な維管束間輸送に寄与していることを確かめました。特に、Lsi2が発現する肥大維管束の維管束鞘に新たに見出された、細胞間の水や溶質の透過を妨げるバリアーは、Lsi6とLsi2-Lsi3の連携によって分散維管束側へとケイ酸を濃縮するために欠かせない堤防の役割をしていることが明らかになりました。
(文責 植物ストレス学グループ・馬 建鋒)

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