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植物の鉄応答に関わる新規短鎖ペプチド因子を同定

[著者] Hirayama, T., Lei, G.J., Yamaji, N., Nakagawa, N., Ma, J.F.

[論文タイトル] The putative gene FEP1 regulates iron deficiency response in Arabidopsis

[掲載論文] Plant Cell Physiology (2018) 59: 1739-1752
https://academic.oup.com/pcp/article/59/9/1739/5056076

[内容紹介] 鉄は生物に必須の元素です。土壌中に含まれる鉄の多くは利用困難な不溶性の三価鉄ですが、植物は土壌から鉄を効率よく吸収することができます。鉄は必須ですがその過剰は有毒で、鉄吸収・輸送は厳密に制御されています。これまでの研究から、シロイヌナズナでは、鉄欠乏状況で転写因子FIT, bHLH38, 39などが、鉄吸収・輸送に関わる遺伝子群を活性化し、一方BTSと名付けられた因子が、鉄吸収輸送遺伝子群の発現を抑制し、鉄の恒常性維持に寄与することが示されています。しかし、植物がどのように鉄欠乏を認識するのか、またその情報がどのようにbHLH39やFITを活性化するのか詳細は不明です。さらに、鉄を吸収する根と鉄を消費する地上部の間での情報交換や個体全体で鉄欠乏応答を統御する仕組みが想定されていますが、その実態は明らかではありません。今回、新規の47アミノ酸からなる短鎖ペプチドFEP1がシロイヌナズナの鉄欠乏応答で重要な役割を担っていることを明らかにしました。今回の研究から、FEP1はbHLH39やFITなどの転写因子より上流で機能することがわかりました。また、fep1変異株の解析などからFEP1が組織間の遠距離情報伝達に関わる可能性も示唆されました。今後、FEP1を起点に鉄欠乏応答機構の解明が進むことが期待されます。この研究は、全国共同利用共同研究拠点事業によりサポートされました。(文責 環境応答機構研究グループ・平山 隆志)

[共同研究] 岡山大植物研 馬研究室、広島大 中川博士

[使用した共通機器] シークエンサー、ICP-MS

関連リンク:環境応答機構研究グループ

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