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葉を『斑入り』にするメカニズムと生理作用の解明

[著者] Kato Y., Kouso, T., and Sakamoto, W.

[論文タイトル] Variegated tobacco leaves generated by chloroplast FtsH suppression: implication of FtsH function in the maintenance of thylakoid membranes

[掲載論文] Plant Cell Physiol., 53: 391-404.

[使用した共通機器] TOF-MS/MS質量分析装置、隔離温室

[内容紹介]
植物の斑入りは多くの植物で観察される形質で、その美しさから園芸品種としての価値が高く、古くから珍重されています。一方で、斑入りは100年以上前から遺伝形質として報告され、遺伝学の対象にもなっています。私たちはこれまで、モデル植物シロイヌナズナを用いることで、葉緑体のタンパク質分解酵素FtsHの量が不十分な時に、斑入りが生じることを明らかにしています。斑入りでは、白色部分が未発達な葉緑体をもつ細胞から構成されており、葉緑体の発達異常で引き起こされると思われます。
今回の論文では、シロイヌナズナで斑入りの原因となったFtsH量の減少が、他の植物種においても同様に重要であるかをFtsH発現抑制タバコを作成することで解析しています。この結果、FtsH量の減少によって、葉に斑を起こすことができることがわかりました。この方法を使うと、様々な植物の葉に斑入りを起こす技術が確立できそうです。
一方、FtsH発現抑制タバコでは、葉の発達初期に斑が明確となるシロイヌナズナとは異なり、葉の発達後期に斑が浮かび上がるように出現しました。電子顕微鏡による観察では、FtsH発現抑制タバコで発達途中の葉緑体内にあるチラコイド膜が、斑の進行とともに崩壊することが認められます。葉の発達初期に葉緑体の発達が止まるシロイヌナズナと今回観察されたFtsH発現抑制タバコにおけるチラコイド膜の崩壊は、同じFtsH量減少が引き起こす斑入りという現象でも、そのメカニズムが植物間で異なることを示唆しています。斑入りという現象の奥深さを表す結果かもしれません。
この論文は掲載号(Plant Cell Physiology 2012年2月号)の表紙を飾り、植物生理学会のホームページでも紹介されています。
(文責 光環境適応研究グループ・坂本 亘、加藤 裕介)

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