本グループでは、生体膜を含む、植物の細胞および分子生理学的な研究を環境応答機構との関係から進めています。塩ストレス・乾燥耐性機構の植物分子細胞生理的研究を行っていますが、その発展として、現在ストレス環境下での水輸送系(水チャネル・アクアポリン)の研究に最も注力しています。
アクアポリン研究については、こちらもご覧ください。
高浸透圧ストレス下におけるオオムギ根の水輸送活性
塩ストレスによって引き起こされる浸透圧変化の刺激を受容して、オオムギ耐塩性品種では
ストレス開始後1時間で水輸送活性は急速に低下し、4時間で一過的な回復が起こることが、
プレッシャーチャンバー法を用いた研究によって示されました。
これらの変化は膜タンパク質(おそらくアクアポリン)のリン酸化、およびエンドサイトーシスを
伴ったリサイクリングによって引き起こされている可能性が各種阻害剤を用いた実験結果から
示唆されました。
オオムギ原形質膜型水チャネル・アクアポリン(HvPIP)の水輸送活性制御の分子機構
ESTデータから予想されたオオムギアクアポリン遺伝子のうちSIP型2つを除く21個
について全長cDNAを単離しました。塩ストレス条件でいくつかの原形質膜型アクア
ポリン(PIP)遺伝子の発現抑制が認められました。また水輸送活性はアクアポリンの
発現制御だけではなく、前項に述べたようなリン酸化やエンドサイトーシス等も関係し
ていること調べています。
アフリカツメガエル卵母細胞を利用した解析系によると、オオムギHvPIP1型は、単独では
水輸送活性が極めて乏しいが、2型と共発現させると水輸送活性が増強します。水輸送活性
を失わせた変異体タンパク質を用いて解析した結果、PIP2とヘテロ四量体を形成することに
よってPIP1は水輸送活性を示すようになること、また、PIP2もPIP1とヘテロ四量体を形成する
ことによってPIP2のホモ四量体の時より活性が増加していることが分かりました。
また5種類ある1型のうちHvPIP1;3野生型ではPIP2との共発現による活性増強能がないが
HvPIP1;3のみで異なっていた1型のN末付近の2アミノ酸を他のPIP分子とおなじアミノ酸に置換
した(18番目のHis→Arg、43番目のPhe→Leu)変異型HvPIP1;3では共発現による水輸送活性
増強が認められました。これらのアミノ酸が、活性増強機構に重要であると考えられます。
酵母細胞によるアクアポリンアクアポリンの新機能(新規輸送基質)の探索
酵母を使ったスクリーニング系を開発し、野生種、及び各種イオン物質輸送能欠損・感受性変
異株内で、イネ、オオムギのアクアポリンを発現させ、新規基質の探索を開始しました。過酸化水素
を透過させる可能性のあるオオムギアクアポリンとしてHvPIP2;5およびHvTIP2;2が同定されました。
ヒ素を透過させる可能性のあるアクアポリンとしてすでに知られているイネアクアポリンOsNIP2;1
OsNIP3;2の他にOsNIP2;2、OsNIP3;3とオオムギアクアポリンHvNIP2;2を見いだしています。
次に二酸化炭素の輸送機能をもったアクアポリンをスクリーニングする酵母実験系を作成しました。
酵母細胞ゲノムにカーボニックアンヒドラーゼ(CA)とpH感受性GFPの遺伝子を組み込んみ、この
酵母に各種アクアポリン分子種を導入して二酸化炭素透過性が上昇すれば、CAによって細胞内
で重炭酸が生成されてpH低下がおこり、この変化をGFPの蛍光発光で検出します。この方法で、い
くつかのアクアポリンが二酸化炭素を輸送しているらしいことがわかりました。