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水と低分子化合物の膜輸送システム:アクアポリン

 

「アクアポリン」(aqua=水、porin=孔の意味、水チャネルとも呼ばれる)は生体膜にある主要なタンパク質のひとつで、水の透過孔(水チャネル)を形成し、植物体内の水の流れに重要な役割を果たしています。ヒトの赤血球膜に存在することが、1992年にPeter Agre博士らの研究グループ(2003年にノーベル化学賞を受賞)によって明らかにされました。植物では翌年、1993年に報告されました。
 アクアポリンは細菌から動植物まで普遍的に存在しており、例えば私達人間の体内では腎臓などで重要な役割を担っていることが知られています。植物は、動物以上に多様なアクアポリン分子種を備えており、その役割が注目されています。最近では、二酸化炭素などの低分子化合物を透過させるアクアポリン分子種も発見され、低分子化合物の輸送体としての生理機能も注目を集めています。


 

アクアポリンの特徴
 
(1)水分子輸送速度が非常に高い。各種イオンチャネル、イオントランスポータなどの輸送体の中でも最速といわれ、条件が良ければ1秒間に10億以上の水分子を輸送します。
(2) 水分子H2Oは透過させても、水素イオンH+は通さない特殊な選択機能/分子構造を持ちます。
(3)分子種によってはグリセロール、尿素、アンモニア、二酸化炭素、酸素、過酸化水素 、ホウ酸、ケイ酸、亜ヒ酸、アルミニウムなどの低分子を透過させることが報告されています。輸送基質特性はアクアポリン分子種ごとに異なりますが、水以外の輸送基質についての選択性を決める分子機構については研究中で、まだはっきりしていません。

アクアポリンの分子構造 
 アミノ酸残基数240290の1本のポリペプチドが水透過孔を形成します。分子は6つの膜貫通領域に加えて、疎水的な2つのハーフヘリックスをもち、これらの膜中ヘリックスが水透過孔を形成します。それぞれのハーフヘリックスにはアクアポリンファミリーに共通なNPA (Asn-Pro-Ala)モチーフが存在し、立体構造の中で互いに向き合う配向をとり、水分子の識別に寄与しています。動植物、微生物を問わず、アクアポリンは基本的にはホモ四量体の安定な構造として、膜中に存在しています。

植物のアクアポリン
 シロイネナズナでは35種、イネでは33種の分子種が存在し、大きなタンパク質ファミリーを形成しています。高等植物のアクアポリンは、PIP(原形質膜型、plasma membrane intrinsic protein)、 TIP(液胞膜型、tonoplast intrinsic protein)、 NIPNOD26-like intrinsic protein,NLP)、 SIPsmall basic intrinsic protein)の4つの主要グループに分類されますが、植物種によっては以外のグループ(XIP他)が存在することもあります。

アクアポリンの活性調節
アクアポリンの活性は、遺伝子やチャネルタンパク質の発現量によって調節されるだけでなく、外界や生体内の環境変化に応じて素早く活性を変化させるために、以下のような調節機構が報告されています。
@チャネルタンパク質のリン酸化によるチャネルの開閉
A細胞質の変化によるチャネルの開閉
Bトラフィッキングによる制御
(アクアポリンが細胞膜と内膜系を行き来する)
Cヘテロマーの形成による活性変化(異種アクアポリンが四量体を形成)
アクアポリンの活性調節は、低酸素とか浸透圧ストレス(塩ストレスや乾燥によっておこります)などの環境下での根の水透過性制御と直接的に関係していることが示されています。

開花とアクアポリン
開花には花弁の細胞が吸水して伸長することが必要で、この時にアクアポリンが関与しています。アクアポリン活性を阻害剤する水銀を処理すると、開花が阻害されます(写真はアサガオの例:名古屋大・白武)。

 



       1         2         3        4
1: water
2: 0.1mM HgCl2
3: 0.5mM HgCl2
4: 1mM HgCl2
 
Katsuhara, M., Hanba, Y. T., Shiratake, K. and Maeshima M. (2007) Expanding roles of plant aquaporins in plasma membranes and cell organelles. Funct. Plant Biol. 35: 1-14.

 

植物アクアポリンと二酸化炭素
いくつかのPIP型アクアポリン分子種は原形質膜において細胞外から細胞内への二酸化炭素の取り込み、TIP型アクアポリンは細胞内で葉緑体への二酸化炭素炭素の取り込みに関与して、葉緑体内のRubiscoに二酸化炭素をスムーズに供給することで光合成機能の向上に寄与していると考えられます。

科研費:基盤研究(C) 課題番号26440146 「研究課題名:二酸化炭素透過性アクアポリンの生理機能および分子機構の研究」(代表:且原)

 

生研センタープロジェクト
且原(Maki KATSUHARA、岡山大学資源植物科学研究所)と仲間たちはアクアポリンの研究を通じて、植物細胞における水と二酸化炭素等低分子化合物の生体膜輸送の生理を、分子レベルで解明すること目指しています。アクアポリンを通じて根にける水吸収の分子機構を理解して、最終的に効率的な水利用をする節水農業へ、あるいは葉における二酸化炭素透過性アクアポリンの機能を利用して光合成活性の向上へ、などの将来を目指して基盤研究を進めています。

生物系特定産業技術研究支援センター(生研センター)の「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」において、平成18年度から22年度まで、植物の「みずみずしさ」の分子機構解明とその応用のための基盤研究、とのタイトのもとアクアポリン研究プロジェクトが実施されました。その概要と成果はこちらです

参考文献

l   和文図書
「水とアクアポリンの生物学」佐々木(編)中山書店2008
(植物だけでなくヒトから微生物のアクアポリンまでわかりやすく解説しています)
「水の吸収と輸送」「植物栄養学」第2版(文永堂出版)201050ページ
(植物の水吸収とアクアポリンを専門的に解説しています)

l   英語文献(総説、原著論文のリスト)
2015年(一部2014年、2016年のものも含む)
2016
年(工事中)


 

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