『宇宙を旅した大麦』の収穫体験イベントと『中西圭三さん』東日本大震災チャリティーライブのご報告

(2011年6月14日更新)

 

 

 植物は様々な自然環境下で各種ストレスと闘いながら適応し、無数の細胞が分裂・分化・増殖を繰り返し、生長しています。これらの生活環において、細胞内では多数の化学物質を特異的に変化させ、生長に欠かせない利用可能なエネルギーを生成し、生体分子を作り出し、統制の取れた植物体を構築しています。

 『細胞分子生化学グループ』では、植物の環境ストレス下における細胞の生理機能や耐性獲得機構などを解明するために、生体細胞を構成する物質を、生化学的手法を用いて、分子レベルで解析しています。

現在の主な研究テーマは次の通りです。

  1. 宇宙環境や酸化ストレスで発現誘導される植物の遺伝子とタンパク質の機能解析と環境適応植物開発への利用(杉本
  2. 細胞壁構造とその分解酵素の分子機能(今野)
  3. 特殊環境下で生育する植物細胞の耐性機能特性(今野)

 Plants are sensitive to various environmental stimuli and respond to physical, chemical, and biological stress factors.  Consequently, plants can undergo changes in their development, morphology, and physiology during their life cycle.  We have elucidated the physiological function and stress tolerant mechanisms of plant cells under stress conditions using the biochemical techniques.

Current research includes

  1. Function of genes and proteins expressed in plants exposed to space environment and oxidative stress, and its application to the development of  stress tolerant plants.
  2. Mechanism of metal tolerance of wild plants.
  3. Characteristics of plant cell walls and their degrading enzymes.

 

 

国際宇宙ステーションのロシアセグメントに設置している植物栽培装置で生育する大麦の遺伝子発現

Gene expression of barley grown in the plant growth chamber onboard Russian segment of International Space Station.

 

 

 

 

 

 

 

 

二次元電気泳動法による耐塩性大麦特異的タンパク質の解析 (a)塩耐性大麦根 (b)塩感受性大麦(矢印)塩耐性大麦特異的タンパク質スポット

Two-dimensional gel profiles of proteins from roots of salt-tolerant barley (a) and salt-sensitive barley (b). Specific protein spots located inthe salt-tolerant barley (arrows).

銅存在かで生育するシダ・コケ植物
Fern (L) and moss (R) grown in the copper-rich medium.

<最近の研究1>

宇宙環境ストレスに曝露した資源植物が発現する遺伝子とタンパク質に関する研究

 

宇宙空間は、微小重力、宇宙放射線、真空状態、急激な温度変化など、地球上とは全く異なる環境をもちます。私たちはロシア連邦国立科学センター生物医学研究所 Sychev 博士らのグループと共同研究を行い、国際宇宙ステーション・ロシアセグメントの船内や船外に曝露した植物の生育や発現する遺伝子とタンパク質の変化を観察し、宇宙環境における植物の適応能力やライフサイクルに対する影響を明らかにします。

共同研究で得られる成果は、将来人類が宇宙空間に長期滞在し食糧利用のために生産する作物に起こりうる問題や植物生産に不可欠な条件を知る上で極めて有用な情報を提供するものです。 また、地球上の環境ストレスでは発生することができない変異体が取得できる可能性があり、生物の発生、分化、形態形成、進化のメカニズムを解明する新たな手がかりを得ることも期待されます。

国際宇宙ステーション・ロシアセグメントの船内にある植物栽培装置で生育するエンドウ(写真提供:NASA)

オオムギ種子が国際宇宙ステーション.ズヴェズダ内で保存され、発芽しました。(写真提供:NASA)

<最近の研究2>

植物のD−アミノ酸代謝酵素の構造と機能に関する研究

近年、D−セリンがほ乳類の脳神経細胞の内在性アゴニストであることや高塩濃度環境に曝露した無脊椎動物細胞でD−アラニンが多量に蓄積してオスモライトとして機能していることが明らかにされ、真核生物におけるD−アミノ酸の重要性に注目が集まっています。植物にもD−アミノ酸が広く存在していますが、その代謝や機能については不明のままでした。最近、私たちは世界に先駆けて植物からセリンラセマーゼ遺伝子をクローニングして活性発現することに成功しました。現在は、植物におけるセリンラセマーゼやD−アミノ酸が植物の生育にどのように機能しているかということを明らかにするために研究を行っています。