Research

「光合成と葉緑体の未知機能を明らかにし、作物やバイオエネルギー利用のための新たな研究リソース・技術の開発を目指す」

本グループでは、光によるストレスが植物の成長に及ぼす影響を研究しています。特に光合成の場である葉緑体(プラスチド)に注目して研究を進め、強光ストレスによる光合成装置のダメージ(光阻害)とその緩和作用について解析し、植物が持つ光合成の環境適応機能を明らかにすることを目指しています。また、プラスチド分化を制御する分子機構についても研究の対象とし、葉緑体分化の全体像と光環境に対する適応、その生理学的役割を明らかにするとともに、葉緑体機能の強化と光合成の改変に関する研究も行っています。現在、進めているテーマとして、以下の4つが挙げられます。

1. 光合成の光阻害と緩和メカニズムに関する研究

光合成装置は刻々と変動する光条件によって常にダメージを受けており、光によるダメージを緩和するために光化学系IIの修復機構を発達させている。これらの緩和作用に重要な働きをする分子の同定と解析を行う(シロイヌナズナ、タバコ)。

光阻害緩和メカニズムをもっと知る

2. 葉緑体分化と高次機能発現に関する分子機構の解析

プロプラスチドから葉緑体やアミロプラストへの分化、プラスチドの分裂に異常を示す様々な突然変異を単離して 解析し、プラスチド分化を制御する遺伝子とそれらの分子機構を明らかにする(イネ、シロイヌナズナ、タルウマゴヤシ)。

さらに詳しくプラスチド分化

3. プラスチドゲノムの母性遺伝機構解明とゲノム改変技術の開発

プラスチドやミトコンドリアが持つオルガネラDNAが母性遺伝する機構を明らかする。プラスチドDNAへ外来遺伝子を導入する手法を開発し、 葉緑体における分子育種への基盤研究を行う(シロイヌナズナ、タバコ、タルウマゴヤシ)。

母性遺伝とオルガネラ

4. 葉緑体機能強化によるステイグリーンと作物生産性の向上

「黄金色に実る稲穂」や「秋の紅葉」などは、植物が自発的に持つ葉の老化作用であり、老化により養分を再利用する植物の生存戦略でもある。葉の老化と光合成・葉緑体の機能を調べることで、光合成をより長く持続するステイグリーン植物の創出と、バイオエネルギー・リファイナリーに利用可能なバイオマス作物への利用するための研究を行う(ソルガム、タバコ、イネ、シロイヌナズナ)。