研究内容(森)

岡山大学資源植物科学研究所 准教授 森 泉です.
私の研究の内容を紹介します.

研究の内容は大きくふたつに分かれます.
1. 気孔の研究
2. 環境毒性学の研究
気孔の研究を中心テーマとして,環境毒性学の研究を副テーマとして現在研究をすすめています.

気孔の研究の紹介 / Stomatal Physiology

1. なぜ気孔か? / Why stomata?
1.1. なぜ気孔か?なぜ気孔は動く必要があるのか?
植物は,地球の歴史をひもとくと,オルドビス紀(およそ4億7千万年前)にはすでに陸上に侵出したと考えられています。このころの植物は維管束が発達しておらず,気孔もまだなかったようです.デボン紀(4億年前から3億年前くらい)にはすでに大きなシダ植物が繁茂していました.この頃までには気孔という大事な器官が発達していたと考えられます.石炭紀(およそ3億年前)には

1.2. 気孔に脳はあるのか?
気孔は環境により自在に開閉して,二酸化炭素吸収と水損失のバランスを調節しています.もちろん,光合成ができない暗黒下では気孔は閉じます.なんとなく賢い印象がありますね.気孔のひらき具合は,二酸化炭素濃度・水(水蒸気圧)・光強度だけではなく,病原菌の存在や植物に悪影響をおよぼす大気汚染物質も感知して変化します.このように沢山の情報を処理して,開度を調節するとは,気孔はますます賢そうです.賢いと言えば

2. 気孔とアブシシン酸 / Stomata and abscisic acid
2.1. アブシシン酸受容体
私たちヒトは,周囲の刺激・信号を受け取る器官を持っています.たとえば,光信号は目で受け取ります.空気の振動は耳で,空気中を漂う化学物質は臭いとして鼻で,口に含んだ液体中の化学物質の刺激は味として舌でそれぞれ受け取ります.それぞれの刺激・信号は目・耳・鼻.舌の細胞にある信号の受容体で認識されます.しかし,植物では

2.2.カルシウムシグナルと活性酸素シグナル
植物は,動物の脳のような中枢神経をもっていません.しかしながら,静かに見える植物もまるで脳があるかのように,迅速に情報を処理しています.それだけではなく,組織と組織のあいだで頻繁に信号のやり取りをしているとしか考えられません.そこでは中枢神経や神経細胞をもつ動物とはことなる情報の処理・伝達のしくみが

3. 気孔と葉内でのCO2の拡散 / Stomata and CO2 diffusion in a leaf
3.1. 葉肉コンダクダンス / Mesophyll conductance
早朝,太陽が登る前,辺りは暗く植物はまだ光合成をはじめていません.日が出,光が差し始めると植物は光合成をはじめます.このとき光合成に必要な二酸化炭素が葉の中へと取り込まれます.葉の表面を覆うクチクラは二酸化炭素をほとんど透過しません.二酸化炭素は主に,開いた気孔を通じて取り込まれます.気孔から取り込まれた二酸化炭素はそのあと

3.2. アクアポリン / Aquaporins
原形質膜の二酸化炭素透過性が実際には意外に低いと考えられていることを紹介しました.葉肉細胞の二酸化炭素透過性は,アクアポリンにより調節されているというモデルが提唱されています.光があたり光合成をするときなどは

4. 気孔と根からの水の吸収 / Stomata and water uptake from roots
4.1. シンプラストとアポプラスト / Symplastic and Apoplastic flows
植物は,一般に根から水を吸収して,地上部へと輸送します.根から地上部への水の輸送は,道管を介して行われます.道管による水の流れはXylem flowと呼ばれ

4.2. アポプラスチックバイパスフローと有害ミネラル / Apoplastic bypass flow and hazardous minerals
ヒトは栄養としてミネラルが必要です.不足すると障害がでるような,重要な(必要な)ミネラル(元素)は必須元素と呼ばれます.植物にも必須元素があり,17の元素が必要です

5. 気孔と大気汚染 / Stomata and air pollution
5.1. 植物の有害ガス耐性機構 / Mechanisms of hazardous gas resistance of plants
有害化合物に直面したとき,動物植物問わず,ふたつの対策があります.ひとつは有害化合物を無毒化するなどして,あっても大丈夫になることです.このような対策(適応)はストレス・トレランス(寛容)と呼ばれます.もうひとつは有害化合物を避けることです.このような対策は

5.2. 亜硫酸ガスに対する応答 / Response to sulfurous gas
植物に対する亜硫酸ガスの影響は,古くから研究されており,イギリスでの産業革命のころからすでに研究が始まっています.古い文献にあたると,当初は植物の硫黄源となり,成長に有用と考えられていたようです.しかし

6. 気孔とイオンチャネルと電気生理学/ Stomata and ion channels and electrophysiology
6.1. 気孔運動のメカニズム / Mechanisms of stomatal movements
動物の運動では,アクチンとミオシンのスライドが,中心的な役割を果たしています.植物ではアクチンとミオシンは,原形質流動において中心的な役割を果たしています.一方,オジギソウをはじめとしたマメ科植物の就眠運動や,気孔の開閉運動などでは

6.2.孔辺細胞における水の移動 / Water movement in guard cells
孔辺細胞では水が出たり入ったりします.そもそも水は,水の化学ポテンシャル(一般に水ポテンシャルと呼ばれています)の差に従い,水の化学ポテンシャルの高い方から低い方へ移動します.孔辺細胞の原形質膜を横切って細胞の内外に水が移動するということは

6.3. 孔辺細胞と膨圧 / Guard cells and turgor pressure
孔辺細胞内の浸透ポテンシャルΨsの低下によって,細胞内に水が入ろうとするエネルギーが,孔辺細胞の膨圧を生み出すということが理解いただけたと思います.次なるポイントは

6.4. 孔辺細胞のイオン輸送と気孔運動 / Ion transport in guard cells and stomatal movements
気孔の開口度が孔辺細胞の浸透ポテンシャルで調節されるというアイディアは1800年代中頃にはすでに確立されていました.その後,科学者達はおよそ100年の間,浸透的に不活性なデンプンと浸透的に活性な糖分との間の相互交換によるものと説明してきました.しかし1960年代後半から

付録 / Appendix
研究所内水輸送研究者向け,アクアポリンと水輸送関連のスクリプトのアーカイブ / Archive of script for oocyte analysis

  • 何列も並んだOocyteの投影面積の結果を10個づつのデータに切り分けるためだけのRスクリプト / The R script to separate each 10 measurements of oocyte projected area data.
  • 卵母細胞の投影面積を測定する FIJI マクロ / FIJI (Fiji is just image J) Macro to measure projected area of oocytes
  • 卵母細胞の投影面積からPfを計算する Rスクリプト / The R script to calculate Pf from the projected oocyte area

The archive does not present on the Lab website. For those working on oocyte swelling assay in IPSR, Okayama University, please visit the WAOT team.

環境毒性学研究の紹介 / Environmental toxicoloty

1. 生態毒性学と水質管理 / Environmental toxicology and water quality management
1.1. 生態毒性学
生態毒性学では,汚染物質などさまざまな化学物質が,湖沼や河川などの水中の生物に与える影響を研究します.この学問分野では,化学物質が水にどのように入り込むのか,どのように移動するのか,そしてどのように

1.2. 水質管理
水質管理は,飲料水の供給,農業用灌漑,レクリエーション,水生生態系の保護などさまざまな水資源の有益な利用を目的としてします.水質の管理は,物理的,化学的な性質の監視と評価だけではなく,生物学的特性を含む水質の目安となる項目の監視と評価も行います.効果的に水質を管理することにより

2. バイオアッセイ / Bioassays

3. ハイスループットバイオセンサー開発 / Development of high throughput biosensor

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