環境認識と気孔運動の連動メカニズムを理解する!

 

森 泉 准教授

 

環境応答機構研究グループ

email: imori(AT)okayama-u.ac.jp (ATをアットマークに変更してください)

環境認識と気孔運動の連動メカニズムを理解する!

 

森 泉 准教授

 

環境応答機構研究グループ

 
imori(AT)okayama-u.ac.jp

Q1 研究内容を教えて下さい。

気孔の運動のメカニズムと気孔が環境を認識するメカニズムを研究しています.そこから広がってブドウのCO2施肥の効果や根から葉までの水の分配も研究テーマとなっています.

Q2 その研究のどういうところが面白いですか?

気孔をはじめとして植物の運動は水圧式です.動きの原動力となる水圧はカリウムなどのイオンを細胞内外に運ぶことで作られます.イオンの運搬は物理化学の法則にのっとって生じます.一方,気孔は脳があってモノを考えているのではないかと思ってしまうような情報処理能力を持っています.気孔のようなちっちゃな細胞の運動を取り巻いて生物学・化学・物理学を一緒くたにして縦横無尽に考えを巡らせる必要があります.そして,その成果が農業にも波及するという広々とした自由な感覚がとても愉快です.

Q3 最終的に何ができるようになるとハッピーなんですか?

研究を最終的にどの方向に向かわせたいかは,ひとつではなく複数の狙いがあって当然と考えています.社会実装を目指す人もいるでしょうし,新しい知識を得るために研鑽するという人もいるでしょう.私は目先の結果よりも,研究の成果が何百年経ってもひっくり返らず,きちんと学問として積み重なるものになってほしいと考えています.それは未来に勉強する人たちの教科書や参考書の内容につながってくるものです.研究の種が未来の研究者により無限に展開していくと私はハッピーです.

Q4 研究を始めたきっかけは何ですか?

ちゃんと答えると大変長くなってしまうので,できるだけ簡潔に答えます.動物の神経の研究に関するブルーバックスの本を読んだ結果,植物においても神経の代わりをする何かがあると思い込んだためです.

Q5 研究をしていて,どんな時が嬉しいですか?

研究成果がでたときも嬉しいですが,案外,実験で使うガラス針が上手につくれた時にテンションが上がります.

Q6 研究で、大変なことはありますか?

アイディアが出過ぎて,それを全部実行できないこと.ついうっかりあれもこれもと手をつけてしまい,自分の頭の中で迷子になるのが大変です.

Q7 研究で好きなことや得意なことを教えて下さい?

実際にやっているときは,神経をすり減らしますが,電気生理学の実験が得意ですし好きです.研究用のイネを育てている田んぼをパトロールするのは大好きです.

Q8 大学では何を専攻しましたか?

教育学部の中等教育教員課程を専攻しました.中学・高校の理科教員を目指していました.

Q9 どうして大学院に進むことに決めましたか?

修士課程は教育学研究科で理科教育を学んでいました.生物学があまりに急速に進歩するので,高校で生物学を教えるのは博士号を取ってからでも良いだろうと博士後期課程に進みました.

Q10 教職を目指されていたようですが,どうして研究者になったのですか?

生物学・化学・物理学の枠を縦横無尽に行き交うイオン輸送の研究を続けるのが面白いなと思っていたことが1番の理由です.2番目の理由はかつての同級生が必死に教員採用試験の勉強をする中,博士号を取るために数年経ってしまった自分があのころの友人たちのように激しい試験勉強をするのは現実的ではない,いっそ研究した方がまだ現実的だと思ったからです.その判断が良かったのかどうかまだわかりません.

Q11 植物研ってどんなところですか?

行き詰まった時に,倉敷美観地区でボーっと川面をみながら白桃アイスを食べて,心を新たにしたところで,徒歩5分でラボに戻れるところです.

Q12 新・大学院生へのメッセージをお願いします。

私が高校・大学時代の体験から学び,これまで実践していることは,好き嫌いせずに勉強できることはなんでも勉強することです.苦手だと思っていたことが,単なる思い込みで,後の人生で役立ったということはたくさんありました.これは役に立たなそうだと思ったときこそチャンスです.それを勉強するといいことがあるはず.