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フィールド環境における作物のレジリエンスを理解するためのイオンダイナミクス研究

TEL. 086-424-1661

〒710-0046 岡山県倉敷市中央2-20-1

研究内容RESEARCH

研究課題名

フィールド環境における作物のレジリエンスを理解するためのイオンダイナミクス研究


研究目的


イオン動態制御(イオンダイナミクス)の理解を通じてフィールド環境における作物の“レジリエンス”のメカニズムを明らかにします.特定のストレスへの耐性の理解ではなく恒常的な生産物の量及び質の維持の理解を目指します.非モデル植物のイオンダイナミクスを解析するために,積極的に電気生理学的手法を活用します.また,圃場にストレスを付加する隔離区画を整備し,形質を検証するなど,イオンダイナミクス研究とフィールド科学を融合する基盤を研究の展望に入れた研究を行います. 
 イオンダイナミクスは溶質の駆動・細胞シグナリング・イオンホメオスタシスなどを包含し,環境に応答し作物の復元的適応に重要です.このプロジェクトではイオンホメオスタシスおよびシグナル伝達機構を理解することにより植物のレジリエンスを理解するための研究を展開する予定です.

上記の目的を達成するために,本チームでは電気生理学やイオンイメージングの手法を取り入れ,当研究所のこれまでの共同研究の強みを生かし以下の3つのアプローチで研究を遂行します.それぞれのアプローチ(サブチーム)に暫定的に担当を置きつつ,個々のサブチーム及び個人は各々得意とする専門解析技術を用いて,研究の進行に応じて技術/課題を相互に共有してチーム全体として研究を進めます.また,研究を力強く推進するために国内外を問わず共同研究を展開します.


研究内容

A.塩ストレスフィールドにおける作物のレジリエンスを理解するためのイオンホメオスタシス研究(担当:且原・堀江・森 )
 電気生理学的手法などを用いて,イネなど作物で機能しているイオン輸送システムが環境因子の強度的/時間的変化にどのように対応して細胞と個体の恒常性維持において機能し,貢献しているかを明らかにします. 根におけるXylem loadingおよびIon sequestrationの機能を果たすと考えられるNa+輸送体やNa+/K+共輸送体の生物物理学的解析により,塩障害におけるイオン動態制御を明らかにします.塩耐性の品種間差によりイオン選択性が異なるHKT輸送体および比較的塩に強い作物でイオン選択性が異なると予想されているグループII型CNGCイオンチャネルのイオン輸送の電気生理学的特性を明らかにします.


B.CO2吸収と蒸散流制御の理解のためのイオンホメオスタシス研究(担当:佐々木・浜本・森 )
 気孔開度調節に関与する数種のイオン輸送体について,それぞれの時間的な活性化の機能変化(シグナル伝達順位)を,フィールド環境を想定し,孔辺細胞プロトプラストへのパッチクランプ解析およびアフリカツメガエル卵母細胞・酵母液胞膜を用いた電気生理学的測定法により解析します. 気孔の開閉にはアニオンチャネルおよびK+チャネルの活性調節が中心的な役割を担っていると考えられます.特に,閉口運動時にはSLAC1とALMT12によるアニオン放出のチャネル活性化が必須で,同時にリン酸化によるKAT1を介した K+流入チャネルの不活性化も重要であると考えられています.本研究ではフィールド想定した環境ストレス下でのSLAC1, ALMT12およびKAT1の活性調節機構をin vivoレベルで明らかにし,電気生理の技術を背景にして,サブセルラーレベルでのアニオン・K+・Ca2+のイオンダイナミクス解析を進めます.


C.イオンイメージングとイオン電極を活用した生体イオン計測による細胞シグナリング研究(担当:村田・宗正・森)
 Ca2+センサータンパク質発現系やK+, H+, Cl-特異的微小電極を用い,シロイヌナズナやソラマメの孔辺細胞内の環境応答シグナルにおけるイオン動態を明らかにします. 動物の神経系は反復的および可塑的な応答が可能な情報処理システムです.植物細胞においても,形態的類似点は異なるものの同様の反復的で可塑的な応答をする情報処理システムが存在します.孔辺細胞のカルシウム振動はその特徴的な例の一つです.これまでは測定技術が未発達であったために測定例がほぼありませんでしたが,膜電位およびK+およびCl-の動態にも特徴があると予想されます.それらのイオンダイナミクスを理解するために,このサブチームではFRETに基づくCa2+センサーを孔辺細胞に発現させる方法と,先端の太さが1 ミクロン以下の微小H+, K+, Cl-電極を細胞に刺入による直接計測法により孔辺細胞のイオン/膜電位振動およびイオン濃度変化を測定する.これにより,植物の恒常性の維持や信号統合におけるイオン動態の役割を明らかにします.


バナースペース

イオンダイナミクス

〒710-0046
岡山県倉敷市中央2-20-1

TEL 086-424-1661
FAX 086-434-1249