気孔におけるアブシジン酸信号伝達経路の解明

気孔におけるアブシジン酸信号伝達経路の解明

* なぜ気孔か?なぜ気孔は動く必要があるのか?

植物の上陸 植物は,地球の歴史をひもとくと,オルドビス紀(およそ4億7千万年前)にはすでに陸上に侵出したと考えられています。このころの植物は維管束が発達して おらず,気孔もまだなかったのではないでしょうか。デボン紀(4億年前から3億年前くらい)にはすでに大きなシダ植物が繁茂していましたので,この頃まで に気孔という大事な器官が発達していたとおもわれます。石炭紀(およそ3億年前)には膨大な量の大気中の二酸化炭素が植物(シダ植物)によって固定されま した。このとき生じた石炭が18世紀後半(2百年あまり昔)からイギリスを中心に始まった産業革命を支えることになるわけです。時空を超えて人類は気孔の 大いなる影響を受けていると想像することはできませんか?

オルドビス紀の海中の空想上の動物のイメージ

オルドビス紀に陸上に進出した空想上の苔類のイメージ
ウロコゴケを参考にしました。

空想上のデヴォン紀の様子。丈が高く,気孔を持つシダ植物が繁茂する。

そして19世紀。気孔を発達させたがゆえに陸上で大きく育つことができるようになった植物と植物が固定した炭素からできた化石燃料。それが産業革命を支えた。時空を超えた,気孔が引き起こした地球の奇跡!?半分冗談ですが,まったく荒唐無稽というわけでもありません。

kikouandtheindustrialrevolution.jpg そして19世紀。気孔を発達させたがゆえに陸上で大きく育つことができるようになった植物と植物が固定した炭素からできた化石燃料。それが産業革命を支えた。時空を超えた,気孔が引き起こした地球の奇跡!?半分冗談ですが,まったく荒唐無稽というわけでもありません。

気孔の獲得
苔類(たいるい)には気孔がないとされていますが,蘚類(せんるい)には気孔が存在する事が知られており,もちろんシダ植物,裸子植物,被子植物には気孔 があります。気孔の重要な役割はひとつではありませんが,なんといっても大事なのは光合成に必要な二酸化炭素の取り込みです。苔類はゼニゴケとウロコゴケ の仲間に分類されるそうですが,ゼニゴケには気室孔なるガス交換をする器官があるそうです。 海水の中は重炭酸(HCO3)が豊富あります。CO2の化学形態ではあまり存在し ませんが,それでも光合成に必要な二酸化炭素を得るのは比較的容易です。また,海中では乾燥の危険を考慮する必要はありません。まあ,潮間帯 (tidal zone)では話が違うかもしれません.ここでは陸上植物の気孔の話をしたいので,海産藻類 (marine algae)の垂直分布の話は止めしょう。 話は陸上植物に戻ります。陸上に上がった植物はすぐに,水環境が海水中と比べ潤沢ではない状況に直面したと考えられます。また,当時は現在と比べ比較にな らないほど,空気中の二酸化炭素濃度が高かったとはいえ,海水中とはことなり,気相から二酸化炭素を取り込まなければならなくなったことでしょう。そこ で,進化の過程で気孔を獲得したと思われます.近年急速に、気孔形成の研究が進んでいます。植物の陸上適応との関連で大変興味がもたれます。それと同時 に、もちろんのこと気孔の運動を理解する生理学的な解析が地球の歴史上極めてエポックメイキングな出来事の一つである植物上陸の成功を理解することが重要 であることは疑う余地はありません。
気孔とガス交換

水の損失と二酸化炭素の獲得のバランスを維持して生命を維持することは陸上植物にとって極 めて深刻な問題です。樹木(じゅもく)はもちろんのこと草本(そうほん)においても、根から比べて高い位置にある葉へと水を運ぶことは簡単なことではあり ません。蒸散による水の損失は、二酸化炭素吸収のトレードオフのための負の要素だけではありません。根から地上部、茎から葉へと導管を経由した、蒸散流に のせて養分が植物体内に分配されます。蒸散流の調節がいかに植物の循環系にとって重要かわかるでしょう。まるで動物の血管系のような働きです。植物の循環 系は二つの心臓があるとも言われています。それは気孔からの蒸散による蒸散圧と根からの水の吸収による根圧を指しています。海水から十分なミネラルを供給 される海藻とはこの点でも大きく異なっています。 蒸散流が養分の分配に重要とはいえ、先に述べたように、陸上植物にとって水の損失は生死を分ける重要な問題です。水やりを忘れると簡単に植物は枯れてしま います。二酸化炭素の吸収と水の損失には、それがすべてではないとはいえ、やはりトレードオフの関係があると考えざるを得ません。 ここで,疑問をもったひとはいませんか?いまどき,人工的に,水は通さないが水蒸気は通す素材でできた服があるじゃないか。陸上植物は進化の過程で二酸化 炭素を透過し、かつ水蒸気は通さないような素材(物質)を獲得し、楽々と二酸化炭素吸収と水損失の問題を解決しなかったのでしょうか。実は、そのような素 材は人工的にも作ることがいまだにできていません。二酸化炭素吸収と水損失は、二律背反の関係にあります。もうお分かりの通り、陸上植物はそのような素材 を獲得するのではなく、進化の過程でより現実的な方法でこれを克服しました。状況により開閉自在の穴、気孔を獲得し、これを利用しています。

>>> アブシジン酸応答機構の解析

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