植物特有の輸送体の幅広い機能の理解を目指す

 

佐々木 孝行 准教授

 

植物分子生理学グループ

 
tsasaki(AT)okayama-u.ac.jp

植物特有の輸送体の幅広い機能の理解を目指す

 

佐々木 孝行 准教授

 

植物分子生理学グループ

 
email: tsasaki(AT)okayama-u.ac.jp (ATをアットマークに変更してください)

Q1 研究内容を教えて下さい。

ALMTと呼ばれる,植物に特異的な「リンゴ酸輸送体の生理機能の多様性」について研究しています。

日本は火山灰が堆積してできた酸性土壌が各地にみられます.酸性土壌では土壌中のアルミニウムイオンが「 Al3+」となり,作物の根に障害を与えます. コムギにはアルミニウム耐性の異なる品種があり,その差は根の先端からのリンゴ酸放出量の違いによることが解っていました.そこで,遺伝子発現をコムギの品種間で比較し,アルミニウム耐性品種のコムギの根で,特異的に発現している遺伝子を見つけました.それが最初に名前をあげたアルミニウムで活性化されるリンゴ酸輸送体( al uminum-activated malate transporter = ALMT)です.
ALMTタイプの遺伝子は植物にのみ存在しています.そして,アルミニウム耐性だけでなく,気孔運動や果実の成熟・酸味など,植物に特有な多くの役割を持つことが解ってきました.そのため,酸性土壌の農耕地で作物の生産量を増やす,気孔運動に関係するため乾燥に強い作物の開発,果実の収量や味を調節するなど,多くのことに応用できる夢があるテーマだと思っています.

Q2 その研究を始めたきっかけは何ですか?

植物研に博士研究員としてきた時,コムギのアルミニウム耐性の解明を『与えられたテーマ』として始めました.今では私のライフワークとなっています。

Q3 大学では何を専攻しましたか?

生物学です.特に授業で聴いた光合成に興味をもち,植物生理学の研究室に入りました.そこでは微細藻類の二酸化炭素ストレス等を主に研究していました.大学院生のとき,植物生理学の教科書には必ず載っているカルビン・ベンソン回路の発見者であるベンソン博士にお目にかかる機会があり,お話しできたことはよい思い出です.

Q4 目標とする研究者像は?

以前,所属先の先輩から「この分野の研究なら〇〇がよくやっている,と言われるようになると一流の研究者」と言われた言葉が心に残っています.小さな分野でよいので, Only Oneになることを目標にしています.

Q5 出身はどちらですか?

秋田県です.「全国花火競技大会」通称「大曲の花火」の開催地として超有名(のはず!?)の会場近くで育ち,毎年家から花火を観ていました.

Q6 研究者にならなかったら,就きたかった職業は?

何かの職人です(家具職人とか).今でもやりたい!?

Q7 オススメの本は?

三浦しをん 著「愛なき世界」.いかにも恋愛小説的なタイトルですが,実は『植物の葉の研究に没頭する』大学院生と,大学の近所の洋食屋の見習いくんの微妙な関係の話で,植物の研究に興味がある人にお勧めです! 三浦しをん先生は,この作品で「2019年の日本植物学会特別賞」を受賞されました.私は会場で,その本に直筆サインを頂きました!

Q8 好きな言葉、あるいは座右の銘は?

「一攫千金」と「七転び八起き」(研究で何か一発当てたい! 実験失敗しても次は成功するぞ!と言う意味で)

Q9 新・大学院生へのメッセージは?

研究では失敗してもあきらめずに続ける気概をもって欲しいです.そして,日々の学生生活を謳歌して下さい.大学院で研究をした経験は,将来必ず何かの役に立ちます.また,学会・研究会などで他大学の学生さんたちと研究仲間のネットワークを広げると,研究生活をより楽しめると思います。