透明化により植物組織中の遺伝子のオン/オフシグナルを可視化

[著者] Kiyotaka Nagaki, Naoki Yamaji, Minoru Murata

[論文タイトル] ePro-ClearSee: a simple immunohistochemical method that does not require sectioning of plant samples

[掲載論文] Scientific Reports: www.nature.com/articles/srep42203

[内容紹介]
 根や葉など器官は、形や性質は異なりますが同じゲノムDNAを持っています。植物の細胞は、さまざまな環境の変化に対応して、個別に遺伝子をオン/オフ(遺伝子発現制御)することで、必要な形質を獲得しています。遺伝子発現は、DNAやヒストンなどに“目印”として、メチル化やアセチル化などの化学的変化(エピジェネティック修飾)が起きることによってオン/オフされています。エピジェネティック修飾を解析する一般的な方法は、細胞をすり潰したり、バラバラにする必要があるため、エピジェネティック修飾の組織内位置情報を知ることはできませんでした。この情報は、個々の細胞が受けている異なる遺伝子制御や組織内ネットワークを探る上で、不可欠な情報です。組織内位置情報を得るためには、植物組織を形状を保ったまま透明化した後、エピジェネティック修飾を個々の細胞で検出する必要がありますが、これまでの方法は、検出感度が低く、さらに長期の処理時間(7~9週間)を要するといった問題があり、透明化した植物内でエピジェネティック修飾を観察することはできませんでした。
 そこで、本研究では蛍光タンパク質を植物組織内で観察するためのClearSee法に酵素処理による細胞壁の部分除去、プロパノールによる細胞膜の部分破壊のステップを加えることによって、組織内への抗体の浸透効率を向上させた「ePro-ClearSee法」を開発しました。ePro-ClearSee法では、実験に用いた単子葉植物5種および双子葉植物4種全てで、透明化後の葉組織内でエピジェネティック修飾を観察できました。処理にかかる時間も10日~3週間程度と従来法に比べて大幅に短くなっています。ePro-ClearSee法は、多くの植物種で利用可能であり、この方法がさまざまな植物の遺伝子発現制御ネットワークの解析やタンパク質の局在解析に利用されることが期待されます。


図1、ePro-ClearSee法による葉の透明化


図2、透明化されたコムギ葉内部のエピジェネティック修飾の検出

(文責 核機能分子解析グループ・長岐 清孝)

関連リンク: 核機能分子解析グループ