研究所紹介

所長からのメッセージ

資源植物科学研究所長
平山 隆志

岡山大学資源植物科学研究所は、国立大学附置研究所・センター長会議を構成する99の附置研究所・センターの一つであり、岡山大学倉敷キャンパスとして幾つかの研究棟からなる研究施設と1.5haの実験圃場を保有する、植物科学に特化した教育研究を実施する研究機関です。教育活動としては、岡山大学大学院環境生命科学研究科の協力講座「植物ストレス科学講座」として大学院教育に参画し、国内外から博士前期課程(生物資源科学専攻)および博士後期課程(農生命科学専攻)の大学院生を受け入れ、これまで多数の修士および博士学位の修了者を輩出しています。研究活動としては、植物遺伝資源を活用する研究や植物ストレス応答に関する基礎科学的研究を推進する一方、2010年度よりそれまでの研究実績から全国共同利用・共同研究拠点として認定を受け、植物科学研究者コミュニティを支援する「植物遺伝資源・ストレス科学研究拠点」として活動を進めています。これまで、様々な有用な研究資源を整備・提供するとともに、実験圃場の整備、研究棟の改築、宿泊施設である倉敷ゲストハウスを設置するなど研究環境を整えながら、2020年度までに500件を超える共同研究を受け入れ、植物科学の推進に貢献してまいりました。

今世紀に入り、人類の活動がもたらす地球環境への過剰な負荷の影響が顕在化してきました。様々な環境問題が出来し、早ければ今世紀の中頃には我々人類の活動は大きく影響を受けると試算されています。特に、温暖化が進んだ後の食糧の確保が世界人口の増加と相まって深刻な問題になると危惧されています。これらの問題を人類全体の問題として早急に解決し持続的社会の構築に向けた基盤構築が必要であるとの認識で、SDGs (Sustainable Development Goals)が国連サミットで提案されました。本学ではSDGs達成を推進しており、この達成における植物科学の役割が大きいことは、論を俟たないでしょう。特に、保有する豊富な遺伝資源を活用しながら植物のストレス応答全般の基礎科学的研究を行い、共同研究拠点として植物遺伝資源・ストレス科学研究を先導する立場にある本研究所の植物科学の社会実装における使命は、大きいと考えております。

このような社会情勢の変化の中、科学技術もまた、今、変革の時を迎えていると言われています。今世紀のデータ科学や通信技術の飛躍的進歩は私たちの生活を一変させ、今後もさらに大きく変えていくでしょう。最新の数理・統計学や人工知能を利用したデータ解析手法は、蓄積された植物科学知見の社会実装を加速すると期待されます。また、2020年にノーベル賞を受賞したゲノム編集技術は任意の遺伝子の機能変換を可能にしました。さらに、分析・解析手法を刷新してきたナノテクノロジーやナノマテリアルの開発も、植物科学の社会実装に貢献すると期待されます。

本研究所の礎となる「財団法人大原奨農会農業研究所」を100年ほど前に設立した大原孫三郎は、いみじくも研究所の役割として「深淵なる学理の研究」と「その実際的応用による農事の改善」を挙げております。今こそ、この彼の基礎研究から社会実装へという研究所に込めた想いを形にするべき時ではないかと考えます。これまで実施してきた基礎科学的研究の推進による植物科学への貢献に加え、獲得した知見の社会実装に向けた研究をこれまで以上に推進すべきと考えております。もちろん、科学的知見の社会実装は、言葉でいうほど容易ではありません。これまでにない研究手法や技術の開発、それを推進する人材の育成、社会実装を担う団体や産業界との連携が必要となります。この遂行には、長期にわたる不断の努力が必要と思われますが、植物科学研究コミュティーのご協力のもと、異種研究分野との協同や産業界との連携を構築しながら、そしてその中で人材を育みながら、推進していきたいと考えております。

所長 平山隆志

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