研究組織
図書館
岡山大学附属図書館資源植物科学研究所分館
岡山大学附属図書館資源植物科学研究所分館は、大正10年に財団法人大原奨農会農業研究所の農業図書館として開設し、以後岡山大学への移管を経て現在まで存続している。100年以上にわたって収集したおよそ17万冊の書籍、1万種以上の雑誌を所蔵しており、農学・植物学に関する日本で最も充実した図書館の一つであるといわれている。平成6年には貴重書を収める書庫等を備えた「史料館」が完成。以来、歴史ある資料を管理・活用するとともに電子ジャーナル等で最新学術情報にアクセスできる、現代の大学・研究所に求められる機能を備えた図書館となっている。
開館時間:9:00~17:00
休館日:土曜、日曜、祝祭日、年末年始(12/29~1/3)、夏季一斉休業日
大正10(1921)年、当研究所の創立者大原孫三郎氏の特別寄付により、書庫および閲覧室が完成しこれにともなって、農学・植物学に関する資料が急速に蒐集されていった。
「以て研究員の研究資料となすのみならず又之を開放して一般の閲覧に供して農業の進歩に貢献せん」(『財団法人大原奨農会要覧』大正15年)とするもので、洋書・和漢書の基本的な資料を広く蒐集した。
こうした資料の蒐集はすべて大原孫三郎氏の命によるもので、購入に要する多額の費用もまた大原氏による特別寄付金によって賄われた。
この時期に開始された蒐集がその後の当館の蔵書の基盤となっているが、その中でも、比較的まとまったコレクションとして以下のようなものがある。
展示内容
【貴重書】
※以下のものを中心に数点を展示しています。
Pflanzenphysiologie (W. Pfeffer著) 1881 ライプチッヒ 上下巻
ドイツの植物生理学の最初の教科書。改訂版刊行に備え、初版本の本文のあとに白紙の項を入れた特装本を作成し、それに著者の多くの書込みがなされており、博士の研究思想過程が如実にわかる貴重な資料。
Opera Omnia (M. Malpighi著) 1687 ライデン版 1冊
Malpighiはイタリアの解剖学者。彼の植物、動物及び医学に関する主論文集で初版本を所蔵
Etudes sur La Biere (L. Pasteur著) 1876 パリ 1冊
Pasteurはフランスの化学者で微生物学者。近代ビール醸造の指導書というべき本。
The Power of Movement in Plants (C. R. Darwin著) 1880 ロンドン
The formation of vegetable mould, through the action of worms : with observations of their habits (C. R. Darwin著) 1881 ロンドン
Darwinはイギリスの博物学者。進化論の研究で有名。この図書は著者からペッファー博士に献呈されたもので、見開き項にDarwin自筆の献辞がある。
「The formation of vegetable mould…」は、2009年に実物を確認した。
Physiotypia Plantarum Austriacarum (C. V. Ettinghausen&A. Pokorny共著) 1873 プラハ 12冊(本文1冊、図版11冊)
オーストリアの植物図鑑。本物の植物を鋳型に印刷されており、葉茎などの凸凹まで表現された精巧な稀書。
Phytanthoza-Iconographia(J. W. Weinmann著) 1737-1745 レーゲンスブルク 4冊(図集のみ4冊)
1,025枚の繊細な彩色銅版画とその記述からなる植物図譜集。ドイツ語版、オランダ語版、ラテン語版が出版されており、当館ではドイツ語版を所蔵。江戸時代、オランダ語版が日本に入り当時の本草学者に影響を与えた。
本草図譜(岩崎常正[灌園]著)大正版 1916-1922 東京 95冊
著者が写生し彩色を加えた草木図に簡潔な解説を付した、一大植物図譜。Weinmann著『Phytanthoza-Iconographia』からの転写も多数みられる。当館では大正復刻版を所蔵。
昆陽漫録(青木昆陽著)宝暦13、続明和3、補同5 写本8冊(6巻続1、補1)
昆陽は江戸中期の儒学者、蘭学者で書物奉行。甘藷栽培の普及で有名。この漫録は元文元年(1736)以来の随筆で、百数の事項にわたっているが、農政物産に関するものが多い。
蕃藷考(青木敦書[昆陽]著) 享保20、明和6 写 鈴弘貞子季 天保11 写本1巻補1巻1冊
度重なる飢饉に備えて、救荒用の作物としてのサツマイモの栽培を、諸書からの引用により奨励した書。漢文。「蕃藷考」が享保20年に書かれ、その後、明和6年に「蕃藷考補」が書かれた。本書は、この2巻を1冊にまとめたものの写本。
科学が未発達な時代には、植物について詳しく記した書物はほとんどありませんが、古い時代ほど人間と植物の関わりは深く、文学作品や歴史書からは人々を取り巻く植物の在り方をうかがい知ることができます。
今回の展示では、『万葉集』などの古典作品を手掛かりに、いにしえの植物事情をご紹介します。
当初こそ大名や旗本を中心とする流行でしたが、ブームの担い手は下級武士や商人、植木屋などの庶民にまで広がり、園芸は身分を問わない趣味として江戸社会に浸透しました。
こうして発展した江戸の園芸文化は当時世界的に見ても最高峰。品種の豊かさや高い園芸技術は西洋諸国から訪れたプラントハンターたちを驚嘆させました。そんな江戸の園芸文化の中でも粋とも言えるものが「奇品」への関心です。
「奇品」とは、花・葉の形や色が他と異なる奇抜なものの事です。通常のものとは全く違う奇花・奇葉を楽しむ人々が増え、アサガオやオモト、マツバランなど様々な植物でブームが起りました。こうした「奇品」の多くは自然交配や突然変異で生まれた変化系統を注意深く見出し、発展させたもので、そこからは当時の栽培家たちの植物に対する深い知識がうかがえます。
ここでは、江戸から明治にかけて刊行された園芸書から、「奇品」を中心にご紹介します。栽培家たちが技を競って作り上げた不思議な植物をご覧下さい。
第9回企画展 「植物でみだしなみ」(2017.3.23-2017.5.13)※展示は終了しました
私たちは、日々、何かしら身だしなみに気を配って生活しています。身だしなみとは、周囲の人に不快感を与えない、その場にふさわしい姿の事です。そして、どんな姿がふさわしいのかは、地域や時代、場面や状況によって千差万別です。この身だしなみ、実は意外に多くの植物に支えられています。身にまとう衣服はもちろん、体を清潔に保ち、また美しく装うためにも、古来より私たちはあの手この手で身近な植物を加工し利用してきました。
気候が違えば生育する植物も違います。そのため、人類の歴史の初期にはその地域に自生する植物が利用されました。やがて流通の発達により、徐々に離れた地域の植物やその加工品が入手できるようになり、そして近代以降は、世界各地の有用な植物が、大規模な栽培(プランテーション)により世界中で利用されるようになりました。
現代では化学的に合成された代用品もありますが、元々自然界に存在していなければ、代用品が作られる事もありません。私たちの身だしなみは、多様な植物の持つ様々な性質、そしてそれを引き出し利用した先人達の知恵によって形作られてきたのです。今回の展示では、私たちの身だしなみを支える多彩(多才)な植物について、東西の植物画からご紹介します。
『本草図譜』『有用植物図説』『Curtis’s botanical magazine(カーティス・ボタニカルマガジン:イギリス)』『Phytanthoza-Iconographia(花譜:ドイツ)』等
特別展示「初代所長近藤萬太郎」(2014.11.20-2015.1.16、12.29-1.2休館)※展示は終了しました
当研究所のルーツは大原奨農会農業研究所にあります。その初代所長が岡山の碩学、近藤萬太郎です。研究所が岡山大学に移管される直前まで所長であり続けた近藤は、岡山県西大寺の生まれ、第六高等学校から東京帝大へと進み、倉敷の大原孫三郎の支援を得てドイツへ留学しました。帰国後すぐに研究所の設立・所長就任となった近藤は、種子学などの学問分野に多大な功績を残し、研究所の名を世界に高からしめた偉大な学者でした。今回の企画では近藤萬太郎に関する未発表資料を多数展示しています。どうぞこの機会に郷土の大学者、近藤萬太郎の偉大さを再発見してください。
・展示資料:農学賞のメダル・勲章等の実物、天皇より下賜の羽織、近藤本人が収集した種子標本、当時の写真、本人の学位記等
特別展示「研究所を支えたモノ」(2014.7.28-9.30、8.13-15休館)
今年資源植物科学研究所は前身である大原農業研究所の創立から100周年を迎えます。この間、当研究所の恵まれた研究環境によって多くの優れた研究成果を残してきました。その研究活動を支えた実験機器等は、現在も大切に保管されています。
今回、これらの実験機器の一部を展示することにしました。状態の良い数点は直に触れてもらえるようにしています。一点一点の持つ歴史を感じていただければ幸いです。
常設展示特別版「大原農研と皇太子殿下行啓」(2013.12.19-2014.3.31、12.27~1.5休館)※展示は終了しました
植物研分館の史料館一階では常設展示として研究所の歴史・倉敷の歴史についての展示を行っています。今回は特別版として、大正十五年に皇太子殿下(昭和天皇)が当研究所にご来所された際の記録をまとめ、「大原農研と皇太子殿下行啓」と題した展示を企画しました。 展示では、植物研分館に残る当時の事務記録から主要な部分を抜き出して紹介、「行啓決定・スケジュール等」「大原農研での準備」「奉迎当日の様子」と順番に展示しています。また、館内では当日の動画も流し、皇太子殿下が当館で実際に御覧になったという貴重資料、大原農研の写真帖、事務記録、「皇太子殿下岡山県行啓誌」も展示しています。研究所内にはこの行啓の石碑が今も残っていますが、それほど当時の所員が名誉に感じた一大イベントでした。是非ご覧ください。
第8回貴重書展「三つの”研究所”」(2013.7.16-2013.8.2)※展示は終了しました
倉敷の名士・大原孫三郎氏は、大正時代に現代まで存続している三つの研究所を創設しました。すなわち、「大原農業研究所」(現岡山大学資源植物科学研究所)「大原社会問題研究所」(現法政大学大原社会問題研究所)「倉敷労働科学研究所」(現公益財団法人労働科学研究所)です。これらの研究所には創立当時から収集されている貴重資料があります。今回の展示ではその三つの研究所の貴重資料をご覧いただきます。一世紀にわたって、研究所で大事に保管され利用されてきた歴史的な資料が倉敷の地に集まります。どうぞこの機会をお見逃しなく
・展示資料
カール・マルクス「資本論」(初版本)ルソー「社会契約論」(初版本)クルムス「Anatomische Tafellen」他歴史的資料多数
貴重書展チラシ (「第8回企画展示ビラ・ポスター」)
展示資料目録 (「全展示品リスト」)
第7回貴重書展 “「癒し」と植物”(2012.9.18-2012.11.30)※展示は終了しました。
「癒し」。少し前からよく耳にするようになったこの言葉は、心を和ませ気持ちを穏やかにするといった、主にメンタルな意味で使われています。一方、日本では昔から「病は気から」と言います。一般には「病気は気の持ちようで、重くもなるし軽くもなる」という意味で使われますが、本来は東洋医学で言うところの「気」の流れが滞ると病気になるという意味であると言われます。いずれにしても、心や精神の状態を整える事と体の健康を保つ事とは、互いに深くかかわっていると言えます。古来より、ハーブや漢方薬としては勿論、西洋医学における薬の原料としても、私たちは植物の力を借りてきました。動物や鉱物など、薬になるものは他にもありましたが、日常的に最も多く用いられたのは植物です。先人たちは身の回りの種々の植物の薬効を調べ、用い方や保存方法などを検証し、そうして得た知識を長く伝えてきました。今回の展示では、そんな「心と体に優しい植物」と人との長い付き合いを、東西の書物をもとにご紹介します
●展示資料
『本草綱目啓蒙』『朝鮮人参耕作記』『Medical botany…(薬用植物誌:イギリス)』等
[お問い合わせ先] | 岡山大学附属図書館資源植物科学研究所分館 〒710-0046 岡山県倉敷市中央二丁目20番1号 TEL&FAX : 086-434-1204 |