マイナス鎖RNAウイルスの合成工場の誘導機構を明らかにしました

[著者] Kondo, H., Chiba, S., Andika, I.B., Maruyama, K., Tamada, T. and Suzuki, N.

[論文タイトル] Orchid fleck virus structural proteins N and P form intranuclear viroplasm-like structures in the absence of viral infection.

[掲載論文] Journal of Virology 87, 7423-7434 (2013)

[共同研究] 中国浙江省農業科学院との共同研究

[共同利用機器] 透過型電子顕微鏡、DNAシークエンサー

[内容紹介] ウイルスは設計図であるゲノム核酸を効率良く複製するために、ウイルス合成工場と呼ばれる細胞内オルガネラ膜由来の小胞やviroplasm(Vp)と呼ばれる封入体を誘導することが知られています。その合成工場がどのように誘導されるのかは一部のウイルスで報告されていますが、実際にどのようなウイルス因子が関与しているのかはあまりよく理解されていません。そこで、ランえそ斑紋ウイルス (OFV)という感染細胞の核内に巨大なVpを誘導する2分節型のマイナス鎖RNAウイルス(植物ラブドウイルスに類似)に着目し、Vp形成機構に関して研究を進めました。
本研究では、まずOFV蛋白質をベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)葉で一過的に発現させ、その細胞核内の構造変化を電子顕微鏡で観察しました。その結果、ヌクレオキャプシド蛋白質Nとマイナー構造蛋白質Pを同時に発現させた場合に、核内にVp様構造が誘導されることが判明した。さらに、蛍光蛋白質タグ(GFP、dsRED)を用いた細胞内局在解析では、Nは主に細胞質に、P(核局在化シグナル・NLS配列をもつ)は核全体に分布しましたが、同時に発現させると両者は核内でVp様の局在パターンを示しました。BiFC解析(YFP断片の再構築で蛋白質間相互作用を調べる方法)では、Vp様領域でNとPの相互作用が確認されました。一般に、蛋白質のNLS依存的な細胞核への移行・蓄積には宿主のインポーチンと呼ばれる輸送因子が関わることが知られています。そこで、ベンサミアのインポーチンαホモログとの相互作用をBiFCで調べたところ、OFV のPとは相互作用が確認されましたが、PのNLS欠失変異体やNとは相互作用しませんでした。
以上より、OFV のPはNと相互作用し、インポーチンα依存的にNの核への集積に関与することが判明し、さらにNと共にVp領域の形成にも必要であると考えられました。この成果は植物マイナス鎖RNAウイルスの複製・粒子形成機構を解明するための第一歩と考えられます。今後は、このVp誘導に対する宿主の応答反応やVpの機能面(ウイルス複製や形態形成の場)に関する研究を進める予定です。(文責:近藤秀樹)

Vp領域誘導

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