日本育種学会優秀発表賞を受賞しました

[著者] 氷見英子・前川雅彦・松浦恭和・武田真

[論文タイトル] ゲノムDNA を用いたリアルタイムPCR によるコムギ種子色に関与するTamyb10-D1 遺伝子ホモ/ヘテロ接合性判定

[掲載論文] 2013年日本育種学会秋季大会(第124回講演会)

[共同利用機器] DNAシーケンサ、リアルタイムPCR

[内容紹介] コムギの種子の色は赤粒と白粒があり、赤粒コムギから作った小麦粉は色が悪い一方、収穫期の降雨によって種子が穂についたまま発芽する「穂発芽」の被害が少ないことが知られています。逆に白粒コムギから作った小麦粉は色が良いのですが、穂発芽被害が大きいことが難点です。このように種子の色は最終加工品の色だけでなく、種子の休眠にも影響する重要な品質項目です。
コムギの種子色素は種子の外側にある「種皮」の部分に蓄積されています。この部分は母系組織であるため、赤粒小麦と白粒コムギを交配しても、種子色が分離するのはF3世代です。つまり種子色の解析には長い時間がかかります。また、コムギはA, B, Dゲノムを持つ異質6倍体であることから、分離比を求めるには数百以上の個体を栽培する必要があり、圃場の面積も必要とします。このことから、種子色のDNAマーカーを開発することが出来れば、短期間で種子色に関わる遺伝分析をすることが出来ます。
我々のグループでは既にコムギの種子色素合成を制御する転写制御因子、Tamyb10遺伝子についてDNAマーカーを開発していましたが、DゲノムのTamyb10-D1遺伝子については劣性系統では欠失していることから、ホモ/ヘテロ接合体を区別することが出来ませんでした。本研究ではゲノムDNAを鋳型にしたリアルタイムPCRを行うことで、ホモ/ヘテロ接合体を判定する方法を開発しました。この方法でホモあるいはヘテロ接合体と判定された系統の種子を実際に圃場で展開し、後代の種子色を観察したところ、リアルタイムPCRの結果と完全に一致していることが証明されました。このことから、ゲノムDNAを用いたリアルタイムPCR法により、確実なホモ/ヘテロ接合性判定が可能になりました。
この実験方法はコムギのTamyb10-D1遺伝子だけでなく、形質転換や放射線照射によって引き起こされるヘミ接合体(対立遺伝子が存在しない)の分析への応用も可能な汎用性の高い方法であると考えられます。(文責 遺伝資源機能解析グループ・氷見英子)

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