高温によるアブラナ科植物自家不和合性機構の不安定性の一端を解明(拠点共同研究による東北大学との研究成果)

[著者] Yamamoto, M., Nishimura, K., Kitashiba, H., Sakamoto, W., and Nishio, T.

[論文タイトル] High temperature causes breakdown of S haplotype-dependent stigmatic self-incompatibility in self-incompatible Arabidopsis thaliana

[掲載論文] Journal of Experimental Botany, 70 5745-5751 (2019). doi:10.1093/jxb/erz343

[共同研究] 山本雅也(東北大学大学院農学研究科)

[内容紹介]
 自家不和合性は植物が他殖を行うための機構の一つであり、アブラナ科植物の自家不和合性はF1品種の採種にも利用されている重要な農業形質の一つである。しかし、採種の現場では高温などの栽培環境の悪化による自家不和合性形質の不安定化が引き起こす自殖種子混入が問題となっている。
 アブラナ科植物の自家不和合性はS遺伝子座に座乗している二つの複対立遺伝子S-locus receptor kinaseSRK)とS-locus cysteine-rich protein / S-locus protein 11SRK / SP11、以下SCR)が重要な役割を果たしている。SRKは雌しべ柱頭の細胞膜に局在する受容体キナーゼを、SCRは花粉表面に局在するペプチドリガンドをそれぞれコードしている。
 われわれは、シロイヌナズナ近縁種であるArabidopsis lyrataSRKSCR遺伝子を導入した自家不和合性シロイヌナズナを材料に用いて高温による自家不和合性形質の能力低下の分子機構の解析を行った。結果、高温は柱頭での自家不和合性能力に欠損を引き起こすことが明らかとなった。また、SRKの対立遺伝子間で高温に対する感受性が異なっていた。また、高温で機能を欠損したAlSRKbは高温条件下で細胞膜局在に欠損があったが、高温でも機能を維持するAlSRK39は高温条件と通常条件で細胞膜局在量に変化はなかった。この結果から、高温によりSRKが細胞膜に局在できなくなることで自家不和合性能力が欠損したと考えられた。今後、本研究で得られた知見を、アブラナ科野菜の育種に活用することで、高温環境でも自殖種子の混入が少ない安定的なF1品種採種が行えると期待される。

関連リンク: 光環境適応研究グループ