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資源植物科学研究所の坂本教授が米国学会の在外終身名誉会員賞を受賞

◆発表のポイント

・米国植物生物学会 (American Society of Plant Biologists, ASPB) [1]は、1924年設立の世界で最大規模の植物科学関連の学会です。

・ASPBが卓越した研究業績により植物科学に貢献した国外会員を表彰する「在外終身名誉会員賞(Enid MacRobbie Corresponding Membership Award)[2]」に、今年度、資源植物科学研究所の坂本亘教授が選出されました。

・坂本教授の専門分野は光合成・葉緑体生物学[3]です。岡山大学で行われた、植物が光合成を維持するしくみの先端的な研究と長年の国際研究活動への貢献が今回評価されました。

■ 内容
<研究成果の内容>
米国植物生物学会 (American Society of Plant Biologists, ASPB) [1]は、1924年に米国植物生理学会として設立された植物科学関連学会の1つです。広く植物に関わる生理学、分子生物学、環境科学、生物物理、生化学などの分野で基礎から応用まで幅広い研究分野を対象としており、会員数が4,000名を超える世界で最大規模の植物関連学会です。Plant Biologyという国際会議の開催や、植物科学分野のトップジャーナル「Plant Cell」と「Plant Physiology」を発行しており、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンにも積極的に取り組んでいます。
ASPBでは、アメリカ国外の会員で、顕著な業績により植物科学分野に貢献した研究者を「在外終身名誉会員賞(Enid MacRobbie Corresponding Membership Award)[2]」により表彰しています。この賞は1932年から制定され、選出された在外会員はASPB会員の投票により信任され終身名誉会員となります。今年度は、イスラエルの研究者とともに、岡山大学資源植物科学研究所坂本亘教授が選出されました。
坂本教授の専門は植物生理学で、植物が光合成を行う場である「葉緑体[3]」が維持されて様々な環境で生育を可能にするメカニズムの研究を行っています。この研究分野は「葉緑体生物学」と呼ばれますが、坂本教授は、葉緑体生物学において遺伝学、生理学、形態学、分子生物学などの様々な手法により葉緑体が維持されるしくみ、とくに光で阻害されるタンパク質が維持されるしくみの解明に貢献しました。葉緑体研究において、世界に先駆けて遺伝学的な解析手法を取り入れ、光により阻害を受けたタンパク質を分解する分解酵素の発見とそれらがはたらくしくみを明らかにしています。光合成で光エネルギーにより水分子を分解して酸素を出すタンパク質複合体「光化学系II」は、強い光にとても弱く光阻害を受けやすいですが、坂本教授らの発見したタンパク質分解酵素が阻害を受けた光化学系IIの修復に関わっていることも明らかにしました。他にも葉緑体の維持に関わる多くの重要な機能を明らかにしています。国際誌の編集長なども務め、長年、研究者コミュニティに貢献していることも評価されました。
植物の光合成は、光エネルギーにより地球上の炭素を循環させる莫大な化学反応です。それらの理解は、地球温暖化による気候変動と環境、エネルギー、食糧生産など21世紀が抱える諸問題と関係しています。岡山大学で進められた植物科学、特に光合成に関する息の長い基礎研究の成果が、今回の国際的な評価につながりました。

■関連サイト・補足
[1] 米国植物生物学会 (America Society of Plant Biologists, ASPB)ウェブサイト
https://aspb.org[New window]
[2]在外終身名誉会員賞(*Enid MacRobbie Corresponding Membership Award)2023年受賞者
https://aspb.org/awards-funding/aspb-awards/corresponding-membership/[New window]
*Enid MacRobbieは過去の受賞者で著名なスコットランド女性研究者。賞に彼女の名前を冠している。
[3] 葉緑体:藻類や陸上植物などで光合成の反応が起こる細胞内器官。顕微鏡でも緑の器官として観察される。進化の過程でシアノバクテリアの細胞内共生により生じ、特徴あるチラコイド膜の構造を持っている(下図)。

 

 

 

 

 

 

<詳しい内容について>
資源植物科学研究所の坂本教授が米国学会の在外終身名誉会員賞を受賞[PDF]

<お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
光環境適応研究グループ
教授 坂本 亘
(電話番号)086-434-1206
(HP)www.rib.okayama-u.ac.jp/index-j.html

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