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第40回資源植物科学シンポジウム及び第16回植物ストレス科学研究シンポジウムを開催いたしました
2025年3月3日から4日にかけて、倉敷市民会館にて第40回IPSR国際シンポジウム及び第16回植物ストレス科学シンポジウムが開催されました。本シンポジウムには国内外7カ国から155名が参加し、植物の生物的および非生物的ストレス耐性に関する理解をめぐって活発な議論が交わされました。
初日(3月3日)には、作物の遺伝資源から細胞・分子レベルのメカニズムに至るまで、植物ストレス耐性に関する多彩なトピックの講演が行われました。John Innes CentreのSimon Griffiths博士は、コムギのWatkinsコレクションに存在する遺伝的多様性の探索について講演し、作物育種における遺伝資源活用の新たな可能性を提示しました。南方科技大学のHongwei Guo博士は、DCP5を介した新規の浸透圧感知メカニズムについて最新の研究成果を報告しました。基礎生物学研究所の征矢野敬博士はマメ科植物の根粒共生におけるサイトカインの周期的振動現象を紹介し、窒素固定共生の新たな動態メカニズムとして注目を集めました。また、東北大学の別所-上原奏子博士は、植物に寄生する昆虫のゴール形成について発表し、植物と昆虫間の複雑な相互作用を明らかにしました。さらに、福建農林大学のYi Li博士は、植物がウイルスを認識し抗ウイルス防御を開始する仕組みを解説し、ウイルス病害への抵抗性メカニズム理解の重要な進展を示しました。
翌日(3月4日)には、東京大学の塚谷裕一博士が葉形の多様性を進化発生学的観点から探究し、葉の形態形成と進化の仕組みに関する知見を示しました。国立遺伝学研究所の津田勝利博士は、茎の節と節間の形成プロセスを進化の観点から議論しました。また、名古屋大学の林優紀博士は、光依存的な気孔開口制御における細胞膜H+‐ATPアーゼの役割について新たな知見を示しました。さらに、名古屋大学の榊原均博士は、サイトカイニンの生合成と長距離輸送を通じた植物成長最適化の分子機構を解説しました。
これらの講演は、乾燥の非生物的ストレスから病原体感染や寄生植物といった生物的ストレスに至るまで、植物の多様なストレスに対する適応戦略の理解を大きく深化させました。講演後には活発な質疑応答や討論が行われ、参加者は分野横断的な知識を共有することで植物ストレス耐性に関する理解を一層深めました。これらの知見と議論を通じて、本シンポジウムは植物の生物的・非生物的ストレス耐性の理解を大きく前進させ、本分野のさらなる発展に貢献する場となりました。なお、次回は国内型シンポジウムとして、2026年3月2日〜3日に倉敷文芸会館にて開催される予定です。