新着情報

イネのケイ素吸収を制御する長距離シグナルタンパク質を発見!ケイ素蓄積を増やし、ストレスに強い作物に期待

◆発表のポイント
イネはシグナルタンパク質SSSを篩管を通して茎葉から根に運ぶことで、ケイ素の吸収と蓄積をフィードバック制御していることを明らかにしました。
DIYインセクトレーザー法を開発し、篩管液中のタンパク質の検出が可能になりました。
SSSは花成ホルモン(フロリゲン)から機能分化しました。この仕組みを獲得することでイネ科植物はより高度にケイ素を利用できるようになったと考えられます。
 岡山大学資源植物科学研究所/J-PEAKS研究特区主任研究者の山地直樹准教授、同研究所の三谷奈見季准教授らの研究グループは、イネの地上部で発現し、根に運ばれて根のケイ素吸収を促進するシグナルタンパク質SSS(Shoot-Silicon-Signal)を発見し、ケイ素の吸収と蓄積をフィードバック制御する仕組みを解明しました。また、DIYインセクトレーザー法を開発することで、イネの篩管液の採取を可能にし、篩管液中のSSSタンパク質の検出に成功しました。これらの研究成果は12月27日午後7時(日本時間)、英国の総合学術誌「Nature Communications」に掲載されます。
 ケイ素は土壌中に普遍的に存在し、陸上植物にとって必須元素ではありませんが、さまざまなストレス耐性を向上させる有益効果があります。イネ科植物、特にイネは多量のケイ素を積極的に吸収して利用しますが、これまでその制御メカニズムは解明されていませんでした。本研究成果によって、イネおよびイネ科植物が多量のケイ素を吸収するだけでなく、緻密に蓄積を制御する仕組みを備えていることが確認されました。この仕組みを応用し、ケイ素施肥の最適化や、より多くのケイ素を蓄積する作物品種の開発を通じて、よりストレスに強く、持続可能な農業生産に貢献することが期待されます。
◆研究者からひとこと
この論文の最終稿を投稿したのは岡山マラソンの翌日でした。マラソンの朝は大盛りのカレーライスを食べて走りました。ケイ素はイネの籾殻にはとてもたくさん蓄積しますが、白米にはほとんど含まれません。走った後はビールをおいしく頂きましたが、こちらは籾殻付きの大麦麦芽を原料にしているのでケイ素をたくさん含んでいます。
■論文情報
論 文 名:Shoot-Silicon-Signal Protein to Regulate Root Silicon Uptake in Rice.
邦題名 「イネの根のケイ素吸収を調節する茎葉由来のシグナルタンパク質」
掲 載 紙:Nature Communications
著  者:Naoki Yamaji, Namiki Mitani-Ueno, Toshiki Fujii, Tomonori Shinya, Ji Feng Shao, Shota Watanuki, Yasunori Saitoh, Jian Feng Ma
D O I:10.1038/s41467-024-55322-7
■研究資金
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤B・19H03250, 基盤A・24H00571 研究代表:山地直樹, 基盤S・21H05034 研究代表:馬建鋒, 基盤C・24K08648 研究代表:三谷奈見季)、武田科学振興財団「生命科学研究助成」(研究代表:山地直樹)、 大原奨農会「共同研究助成」(研究代表:山地直樹)の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
イネのケイ素吸収を制御する長距離シグナルタンパク質を発見!ケイ素蓄積を増やし、ストレスに強い作物に期待
<お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
准教授 山地 直樹
Back to Top