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孔辺細胞には未発見のアブシシン酸受容体が存在する

[著者] Yin Y, Adachi Y, Ye W, Hayashi M, Nakamura Y, Kinoshita T, Mori IC, Murata Y

[タイトル] Difference in abscisic acid perception mehcanisms between closure induction and opening inhibition of stomata.

[掲載誌]  Plant Physiol.(2013), 163: 1600-610

[共同研究] 岡山大学学内共同研究/名古屋大学

[内容紹介] 気孔は一対の孔辺細胞から構成される穴で,植物の葉の中への二酸化炭素の取り込みをすると同時に蒸散による水分の損失にも重要な働きをしています。気孔開度は環境要因により変化する訳ですが,アブシシン酸は乾燥時に気孔閉口を誘導する非常に重要な植物ホルモンです。このため,古くから大変研究が進んでおります。特に,アブシシン酸を感じるタンパク質分子,ABA受容体の実体を明らかにすることは長年の研究者の夢でした。
 1990年代の研究により,孔辺細胞には少なくとも2種類のアブシシン酸受容体が存在するというモデルが提唱されました。ひとつは細胞表面に存在して気孔開口を抑制する役割をもつ受容体で,もうひとつは細胞内に存在して気孔閉口を誘導する役割をもつ受容体であると考えられています。しかしその後も細胞外受容体については議論が続いています。
 2009年に細胞内に存在するアブシシン酸受容体が発見されました。PYR/PYL/RCARと呼ばれる一群の遺伝子が受容体の実体であることが示されました。この遺伝子はシロイヌナズナのゲノムに14個存在し,遺伝子ファミリーを作っています。このうちPYR1,PYL1,PYL2,PYL4と名づけられた4つの受容体遺伝子が,アブシシン酸による気孔閉口誘導に関与していることがすでに明らかにされていました。本研究では,この4つの遺伝子が気孔開口阻に関与しているかどうかを検証しました。
 4つの遺伝子が破壊された突然変異植物体では,やはりアブシシン酸による気孔閉口運動は欠損していました。しかし,アブシシン酸による気孔開口の阻害は正常であることが観察され,野生型植物体と同程度のアブシシン酸感受性を持つことが明らかになりました。このことはPYR1,PYL1,PYL2,PYL4遺伝子以外に,気孔開口を抑制する役割をもつ受容体が存在することを示しています。(文責 環境応答機構研究グループ 森 泉)

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環境応答機構研究グループ
研究者になるつもりじゃなかったのに ただいま気孔の研究中 環境応答機構研究グループ 助教 森先生

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