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光合成の「足場」を作るタンパク質VIPP1の構造の解明

[著者] Tilak Kumar Gupta, Sven Klumpe, Karin Gries, Steffen Heinz, Wojciech Wietrzynski, Norikazu Ohnishi, Justus Niemeyer, Benjamin Spaniol, Miroslava Schaffer, Anna Rast, Matthias Ostermeier, Mike Strauss, Jürgen M. Plitzko, Wolfgang Baumeister, Till Rudack, Wataru Sakamoto, Jörg Nickelsen, Jan M. Schuller, Michael Schroda, Benjamin D. Engel

[論文タイトル] Structural basis for VIPP1 oligomerization and maintenance of thylakoid membrane integrity

[掲載論文] Cell 184(14):3643-3659 (2021). doi: 10.1016/j.cell.2021.05.011

[内容紹介]
地球上のほとんどの生命を支える光合成反応は、植物や藻類の葉緑体で行われています。VIPP1は、酸素発生型の光合成を行う生物(植物、藻類、シアノバクテリア)に広く見出されるタンパク質で、「光合成の足場」とも言えるチラコイド膜の形成や、光合成機能に重要であると考えられてきました。それに加え、私たちも以前からVIPP1が浸透圧、及び熱ストレス条件下において葉緑体包膜の機能維持に重要であることを明らかにしてきました。しかしながら、これらのメカニズムについては不明な点が多く残されています。VIPP1の作用機序を明らかにするために、本研究では近年構造生物学の分野でいくつもの謎を解明してきているクライオ電子顕微鏡を用いてVIPP1の構造を解析しました。その結果、VIPP1が鳥の巣、あるいはカゴのような構造を持っていることが明らかになりました。興味深いことに、この構造は動物や酵母で生体膜の修復に関わるESCRT-IIIとよく似ており、同様の構造を持ったタンパク質が以前考えられていた以上に動植物の枠を越えて生物に普遍的に存在していることがわかりました。今回の成果は光合成の理解を深め、変動する気候環境下での安定した農作物の生産や、バイオ素材、バイオ燃料の効率的な生産による脱炭素社会への貢献が期待出来ます。(文責 大西紀和・坂本 亘)

[共同研究] ヘルムホルツ研究所、カイザースラウテルン工科大学(いずれもドイツ)

関連リンク: 光環境適応研究グループ

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