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澱粉合成に関与する2つの遺伝子の突然変異体の単離と解析

[著者] Matsushima, R.*, Hisano, H., Galis, I, Miura, S., Crofts, N., Takenaka, Y., Oitome, N. F., Ishimizu, T., Fujita, N., Sato, K.

[タイトル] FLOURY ENDOSPERM 6 mutations enhance the sugary phenotype caused by the loss of ISOAMYLASE1 in barley

[掲載誌] Theoretical and Applied Genetics 136, 94 (2023)
https://link.springer.com/article/10.1007/s00122-023-04339-5
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1080.html

[内容紹介]
私たちは、これまでに澱粉粒の形を簡便に観察する方法を開発しています(https://academic.oup.com/pcp/article/51/5/728/1821566)。この方法を用いて、澱粉粒の形を指標にした探索を行えば、澱粉関連遺伝子の変異体を効率的に単離できるのではないかと考えました。本研究では、オオムギを用いて澱粉粒の形を指標にした探索を行い、澱粉粒の形が野生型とは異なるhvisa1変異体とhvflo6変異体を単離しました。解析の結果、hvisa1変異体は澱粉合成関連酵素の1つで、澱粉を構成するグルコース鎖のつながり方を制御するイソアミラーゼという酵素の遺伝子が変異していました。一方、hvflo6変異体は、澱粉合成関連酵素を補助する機能を持つと考えられているFLO6遺伝子が変異していました。これまで植物がこの2つ遺伝子の変異を同時に持った場合にどういう事が起きるのかは分かっていませんでした。そこで両者を交配することにより二重変異体を作出したところ、二重変異体の種子では一部の細胞でしか澱粉が合成されず、野生型や単独変異体よりも種子中の澱粉量が顕著に減少している事が分かりました。また二重変異体では澱粉が減少する一方で、単糖類(グルコースやフルクトース)や二糖類(スクロースやマルトース)が種子中に多く蓄積していることが分かりました。このような表現型は、hvisa1の単独変異体でも観察されましたが、hvflo6変異を同時に持つ事でより強く変異の特徴が表れました。2つ遺伝子の変異の間に何らかの遺伝的な相互作用が起こり、二重変異体では澱粉合成が阻害され、その結果引き起こされた代謝異常の結果、糖類の量が上昇したと考えられます。オオムギは、醸造用、食用、飼料用、飲料用に利用される多用途作物であり、種子の澱粉特性や成分特性は重要です。本研究で発見したオオムギ変異体を利用することで、新しい用途開発や付加価値の高い品種育成につながるかもしれません。(文責 光環境適応研究グループ・松島 良)

[共同研究] 秋田県立大学、立命館大学

[使用した共通機器] ウルトラミクロトーム、GC-MS、実験圃場

[お問い合わせ先] 光環境適応研究グループ 松島 良 (rmatsu@okayama-u.ac.jp)

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