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病原菌を感知するセンサーの進化の歴史を解明
[著者] Li, Y., Wang, Q., Jia, H., Ishikawa, K., Kosami, K., Ueba, T., Tsujimoto, A., Yamanaka, M., Yabumoto, Y., Miki, D., Sasaki, E., Fukao, Y., Fujiwara, M., Kaneko-Kawano, T., Tan, L., Kojima, C., Wing, R.A., Sebastian, A., Nishimura, H., Fukada, F., Niu, Q., Shimizu, M., Yoshida, K., Terauchi, R., Shimamoto, K., Kawano, Y.
[タイトル] An NLR paralog Pit2 generated from tandem duplication of Pit1 fine-tunes Pit1 localization and function
[掲載誌] Nature communications, 15(1):4610 (2024)
DOI: Doi.org/10.1038/s41467-024-48943-5
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-024-48943-5
[内容紹介]
植物は、病害虫から身を守るために病害虫を見つけるセンサーの役割を担うNLR型免疫受容体を持っています。植物は、このNLR型免疫受容体の遺伝子を数多く持っており、これが植物の強力な防御システムの秘密だと考えられています。岡山大学資源植物科学研究所の河野洋治教授は、中国科学院CAS Center for Excellence in Molecular Plant Scienceなどの研究機関と協力して、NLR型免疫受容体遺伝子の進化の歴史を解析しました。その結果、イネの重大な病気であるいもち病に対して抵抗力を高める仕組みを明らかにしました。河野教授らは、進化の過程で1つのNLR型免疫受容体遺伝子が遺伝子重複により2つに増え、それぞれが異なる役割を担うようになったことを発見しました。1つは病原体を見つける「センサー」の役割、もう1つは実際に免疫反応を引き起こす「免疫誘導」の役割です。これら2つの遺伝子が協力して働くことで、より効果的に病気から植物を守っていることがわかりました。この研究成果は、2024年5月30日に科学雑誌「Nature Communications」に掲載されました。
今後、この研究をさらに進めることで、1つの免疫受容体で多くの種類のいもち病菌を認識できる「人工免疫受容体」を作り出せる可能性があります。これは、イネだけでなく、最近いもち病が広がりつつあるコムギにも応用できると期待されています。つまり、世界の主要な穀物であるイネとコムギの両方で、いもち病への抵抗力を高められる可能性があるのです。この研究は、私たちの食糧生産を脅かす病気から作物を守る新しい方法の開発につながる重要な一歩といえるでしょう。(文責:植物免疫デザイングループ・河野 洋治)
お問い合わせ先:植物免疫デザイングループ・河野 洋治