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赤潮原因藻ヘテロシグマはポリリン酸を蓄積する細菌を『食べて』栄養源とする

[著者] Seiya Fukuyama, Fumiko Usami, Ryuichi Hirota, Ayano Satoh, Shizuka Ohara, Ken Kondo, Yuki Gomibuchi, Takuo Yasunaga, Toshimitsu Onduka, Akio Kuroda, Kazuhiko Koike, Shoko Ueki

[論文タイトル] Proliferation of a bloom-forming phytoplankton via uptake of polyphosphate-accumulating bacteria under phosphate-limiting conditions

[掲載論文] ISME Communications, Volume 5, Issue 1, January 2025, ycaf192
https://academic.oup.com/ismecommun/article/5/1/ycaf192/8371785
PubMedのURL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41368071/

[内容紹介] 赤潮とは、ある種の藻類が高密度で集合し、海水が着色する現象です。なぜ赤潮が起こるのか、その原因はわかっていないことが多くあります。私たちは、赤潮の原因となる藻類の一種、ヘテロシグマの環境中での振る舞いを研究しています。ヘテロシグマは、光合成を行うことができる植物プランクトンで、通常は1 mLの海水にほんの数細胞程度生息しています。何らかの要因により急激に高密度で集積し、時に1 mLの海水に数十万細胞/という密度に達し、赤潮を形成します。ヘテロシグマ赤潮が起こると、養殖魚が大量に死んだりと、漁業に悪影響を与えます。
私たちは、今回、ヘテロシグマが様々な細菌を貪食することを見出しました。ヘテロシグマは、増殖するのにリン酸を必要とします。私たちは、ヘテロシグマは、特にリン酸が欠乏した状態で細菌を多く貪食すること、また、リン酸分子がたくさん繋がったポリリン酸という物質を多く蓄える細菌を貪食すると、ポリリン酸を利用して光合成を行って増殖できることを見出しました。この結果は、ヘテロシグマが赤潮を形成する際に、細菌を『食べて』栄養源として利用している可能性を示します。これまで、赤潮を防止する目的で、各地で海水中のリンや窒素を含む化合物の濃度がモニターされてきましたが、本研究は、これ以外にも、ポリリン酸を蓄積する細菌の分布が、赤潮の起こりやすさに影響している可能性を示したといえます。本研究は、海洋細菌が赤潮原因藻に貪食されて、栄養源として重要な役割を示しうることを、初めて示したものです。(文責 植木 尚子)

[共同研究] 本研究は、広島大学、九州産業大学、水産教育研究機構、大阪府立環境農林水産総合研究所 との共同研究として行いました。

関連リンク:植物環境微生物学グループ

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