果樹類の重要病害である白紋羽病菌に感染するウイルスの総説です

[著者] Kondo, H., Kanematsu, S., and Suzuki, N.

[論文タイトル] Viruses of the white root rot fungus, Rosellinia necatrix.

[掲載論文] Advances in Virus Research 86, 177-214.

[共同研究] 果樹研究所・兼松聡子博士との共同研究

[共同利用機器] 超遠心機、DNAシークエンサー

[内容紹介] 白紋羽病菌(Rosellinia necatrix)は土壌生息性の植物病原性糸状菌(子のう菌)で、その宿主は400を超える植物種です。特に、日本では果樹(ニホンナシ、リンゴ等)などの多年生作物に甚大な被害をもたらします。その被害額は長野県だけでも10億円にも上ると試算されています。有効な防除法としては、土壌を掘り起こし、1樹あたり50〜200リットルの農薬を根元に注入するという手法がありますが、大変な労力とコストを必要とします。そこで、この手法に代わるものとして菌類ウイルスを利用した生物防除(ヴァイロコントロール)が松本直幸博士ら(元農環研)により提唱されています。彼らのグループはこれまでに、1000株以上の白紋羽病菌を日本各地から収集し、なんと20%もの分離菌株にウイルスが感染している事実を明らかにしました。その後、筆者らのグループも参画し、それらウイルスの性状解析を精力的に進めてきました。
本総説では、これまでに性状解析が行われたウイルスを中心に据えて、菌の一般的性状、発生果樹園での菌の集団構造、周辺技術の進歩も詳しくまとめました。本菌からは10を超える新種ウイルスが見つかり、そのうち2種が新科に属することが国際ウイルス分類委員会(ICTV)に提案され、承認されています。近年、新興感染症のからみで人間と接触の可能性がある(小)動物から未知ウイルスの探索が盛んに行われていますが、菌類も、まさに、ウイルスハンティングの最前線と言えます。白紋羽病菌の研究は、ウイルス多様性、新規のウイルス粒子構造やウイルス遺伝子発現様式の発見につながりました。また、その中の2種はヴァイロコントロール因子(病原性糸状菌を弱毒化する)として有望であることが示され、現在それらの応用を目指した研究も進行中です。従来、菌類ウイルス/宿主としては、ウイルス/クリ胴枯病菌あるいはウイルス/パン酵母(S. cerevisiae)が主役を演じてきました。しかし、それらに加え、ウイルス/白紋羽病菌も菌類ウイルスの相互作用解析系の表舞台に上がってきました。

尚、本研究は、果樹研の兼松博士との共同研究として行われました。(文責:鈴木)。

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白紋羽病菌に感染するウイルス(赤字)を含む分子系統樹の一例

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