キラーウイルスの仲間(ヴィクトリウイルス)に感染性有り

[著者] Chiba, S., Lin, Y.-H., Kondo, H., Kanematsu, S and Suzuki N.

[論文タイトル] A novel victorivirus from a phytopathogenic fungus, Rosellinia necatrix is infectious as particles and targeted by RNA silencing.

[掲載論文] Journal of Virology (2013), vol. 87, 6727-6738. doi:10.1128/JVI.00557-13. “Spotlighted”

[共同研究] 果樹研究所・兼松聡子博士との共同研究

[共同利用機器] 超遠心機、DNAシークエンサー

[内容紹介] 感染させることが困難なウイルスの存在を皆さんはご存知でしょうか?10年前までは、菌類ウイルスではそれが当たり前と考えられていました。2本鎖RNAウイルスの複製機構、粒子構造、粒子構築の解明に大きな役割を果たして来たSaccharomyces cerevisiae virus L-A(酵母のキラーサテライトウイルスのヘルパー)についても、未だに再現性よい感染系がありません。このキラーウイルスが属するトティウイルス科(Totiviridae)は、酵母、糸状菌、原生動物に感染するウイルスをメンバーに持ちます。構成員に共通の特徴として、球状粒子(直径~40 nm)に単一2本鎖RNAゲノムを包含し、通常外被タンパク質と複製酵素を並列にコードすることが上げられます。そのうち、糸状菌を宿主とする構成員はヴィクトリウイルス属に分類され、数多くの種が報告されています。しかし、キラーウイルスの例のようにトティウイルス科では再現性の高いウイルス接種法が未確立で(一部の原生動物感染性のジアルディアウイルス例外を除く)、宿主域やウイルス間、ウイルス-宿主間の相互作用に関する知見は乏しいのが現状です。
本研究では、白紋羽病菌W1029株から分離・同定された新規ヴィクトリウイルスRosellinia necatrix victorivirus 1 (RnVV1)の粒子トランスフェクション法を確立し、生物学的および分子生物学的性状を解析しました。RnVV1は、約5 kbpからなる非分節型の2本鎖RNAゲノムを持ち、複製酵素はUAAUGを介在配列とする翻訳停止・再開始機構により翻訳され、他のヴィクトリウイルスの複製酵素と34〜58%の配列相同性を有していました(普遍的なヴィクトリウイルスと判明)。粒子を用いたトランスフェクションの結果、白紋羽病菌に加えてクリ胴枯病菌(マイコウイルス研究のモデル糸状菌)にRnVV1を持続感染させることに成功しました。すなわち,トティウイルス科ウイルスの宿主域を検定する実験系を初めて確立しました。その結果、RnVV1は白紋羽病菌では無病徴感染することが示されました。一方、クリ胴枯病菌ではRnVV1感染による表現型の変化は、RNAサイレンシング欠損株がでのみ認められ、野生型株では確認されませんでした。さらに、野生型株では、RnVV1の複製がRNAサイレンシングで顕著に抑制されること、ハイポウイルスとの共感染またはそのRNAサイレンシングによる抗ウイルス機構するサプレッサーp29の供給でRnVV1複製が上昇することが明らかとなりました。

以上のように、本研究は、トティウイルス科構成員の粒子としての感染性を明らかにし、宿主域を実験的に拡大した最初の報告例となります。また、トティウイルスがRNAサイレンシングの標的となることも初めて明らかにしました。

尚、本論文はスポットライトで取り上げられました。(文責:鈴木信弘)RnVV1 Fig.

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