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アルミニウムによる細胞死のプロセスに液胞の崩壊と液胞プロテアーゼが関わります

[著者] Koki Kariya*, Tijen Demiral*, Takayuki Sasaki, Yoshiyuki Tsuchiya, Ismail Turkan, Toshio Sano, Seiichiro Hasezawaand Yoko Yamamoto**
(*: co-first, **: corresponding)

[論文タイトル] A novel mechanism of aluminium-induced cell death involving vacuolar processing enzyme and vacuolar collapse in tobacco cell line BY-2

[掲載論文] J. Inorg. Biochem.(2013), 128: 196-201

[共同研究] Ege University(トルコ)、Harran University(トルコ)、東京大学、法政大学

[使用した共通機器] DNAシークエンサー

[内容紹介] 酸性土壌は作物の生育を阻害する問題土壌の代表的なものであり、生育阻害の主要因子の一つが、土壌の酸性化に伴い溶出してくるアルミニウム(Al)イオンである。Alイオンは、根の先端にある細胞伸張域に吸着することで根の伸張阻害と細胞死を誘発するが、その分子メカニズムはまだ充分に解明されていない。これまでに、Alイオンによる細胞死のプロセスにミトコンドリアの機能障害や活性酸素種の誘発が報告されている。本研究は、タバコ培養細胞株の一つであるBY-2細胞を用い、植物に特徴的なオルガネラである液胞に着目して解析を行った結果、Alイオンによる細胞死のプロセスに、液胞の崩壊と液胞に局在するプロテアーゼVacuolar Processing Enzyme (VPE) の関与を見いだした。対数増殖期のタバコ培養細胞は、根端の細胞分裂域・伸張域の細胞に相当し、Alに対する応答反応も根端細胞と極めて類似しているため、Al障害機構の解析に適している。本研究では、対数増殖期のBY-2細胞をAlで処理後、細胞死の指標として細胞膜の障害に依存するEvans blueの取り込み、液胞機能の指標としてNeutral redの取り込み、増殖阻害の指標としてAl処理細胞を栄養培地で培養することによる湿重量の増加で、それぞれAl濃度依存性とAl処理に伴う経時変化を定性・定量的に解析した。これらの解析結果より、VPE活性の上昇は、増殖能の阻害や細胞膜損傷の誘発と強くリンクしており、VPE活性阻害剤で細胞膜損傷が一部抑制されたこと、さらに、AlによりVPE遺伝子の発現上昇が観察されたことから、Alによる細胞死の誘発機構にVPEが関与している可能性が示唆された。 (文責:山本洋子)

お問い合わせ先: 植物成長制御グループ・山本洋子

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