白紋羽病菌の潜在的ヴァイロコントロール因子がクリ胴枯病菌でも効果あり。

[著者] Salaipeth, L., Chiba, S., Eusebio-Cope, A., Kanematsu, S. and Suzuki, N.

[論文タイトル] Biological properties and expression strategy of Rosellinia necatrix megabirnavirus 1 in an experimental host Cryphonectria parasitica.

[掲載論文] Journal of General Virology, 95 740-750. doi: 10.1099/vir.0.058164-0.

[共同研究] 果樹研究所・兼松聡子博士

[使用した共通機器] 超遠心機、DNAシークエンサー

[内容紹介] 白紋羽病菌、Rosellinia necatrix は土壌生息性の植物病原子のう菌です。本菌は宿主範囲が極めて広く、日本の果樹をはじめとする多年生作物の根に感染し、甚大な被害をもたらします。他の土壌病害と同様にその防除は非常に困難で、農薬を用いた防除は可能であるものの膨大な費用と労力を要し、環境への影響も懸念されます。一方で、生物防除の一種であるヴァイロコントロール(ウイルスを用いた糸状菌病の生物防除)を目指したウイルス探索が1990年代後半から進められました。その結果、その中に本菌の病原力を低下させるウイルスが存在することが明らかとなりました。特に、2本の2本鎖RNAをゲノムにもつRosellinia necatrix megabirnavirus 1 (RnMBV1)は潜在的ヴァイロコントロール因子として注目を集めています。
この研究では、RnMBV1が白紋羽病菌とは分類学的に遠縁の子のう菌でウイルス/宿主相互作用のモデル糸状菌でもあるクリ胴枯病菌に感染し、しかも、その病原力を衰退させることを示しました。この結果は、RnMBV1がクリ胴枯病菌でも生物防除因子として機能する可能性を示唆します。しかし、RnMBV1の分生胞子への伝搬率が極めて低く、環境適応能の向上が課題となります。また、他の新知見も得られました。RnMBV1が菌類の抗ウイルス防御機構であるRNAサレンシングの標的になることを明らかにし、他方、これまで不明であったRnMBV1の遺伝子発現機構の一部を解明しました。RnMBV1の2本のゲノムはそれぞれが2つのORFを有し、別々に粒子に取り込まれます。キャプシド蛋白質(CP; 粒子の主要構造蛋白質)はdsRNA1のORF1にコードされています。今回、その下流のORF2(複製酵素をコード)が-1フレームシフティングにより翻訳され、CPとの融合蛋白質として発現されることを証明しました。また、この融合蛋白質が粒子に取り込まれることを示しました。
これらの成果は、筆者らが開発した精製粒子を用いた人工感染法を用いることにより得ることが可能となりました。(文責:鈴木信弘)

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