白紋羽病菌の潜在的ヴァイロコントロール因子のゲノム再編成。

[著者] Kanematsu, S., Shimizu, T., Salaipeth, L., Yaegashi, H., Sasaki, A., Ito, T. and Suzuki N.

[論文タイトル] Genome rearrangement of a mycovirus Rosellinia necatrix megabirnavirus 1 affecting its ability to attenuate virulence of the host fungus.

[掲載論文] Virology 451, 308-315. doi.org/10.1016/j.virol.2013.12.002

[共同研究] 果樹研究所・兼松聡子博士

[使用した共通機器] 超遠心機、DNAシークエンサー

[内容紹介] RNAゲノムの再編成(欠失、伸長)はウイルスの多様化と進化の推進力となっています。この組換え機構の一つとしてウイルスRNA複製酵素の鋳型スイッチが考えられています。最近、筆者らのグループを含め、菌類の2本鎖RNAウイルスが研究室で高頻度でゲノム再編成を起こすことを明らかにしました。例えば、マイコレオウイルスという11本のdsRNAセグメント(S1〜S11)を持つウイルスでは、S1 S2, S3, S6, S10で再編成が生じることが報告されました。今回の研究では、2本のdsRNAセグメント(dsRNA1, dsRNA2)をゲノムにもつRosellinia necatrix megabirnavirus 1 (RnMBV1)で見つかった再編成株を調べ、機能解析に繋げました。
主役のウイルスRnMBV1 の宿主は白紋羽病菌Rosellinia necatrix で植物病原子のう菌です。RnMBV1は宿主菌を病気にし、多年性植物(果樹等)に対する病原力を衰退させます。従って、潜在的ヴァイロコントロール(ウイルスを用いた糸状菌病の生物防除)因子として注目されています。RnMBV1のdsRNA1にはキャプシド蛋白質とRNA合成蛋白質をコードするORF1, 2が、dsRNA2には機能未知の蛋白質をコードするORFが2つ座乗しています。精製RnMBV1を白紋羽病菌プロトプラストに導入し、再生したコロニーを調べた結果、低頻度ではありますが、再編成株(RnMBV1/RS1)が検出されました。RS1は正常なdsRNA1の他にdsRNA2よりもサイズが小さくなったdsRNAS1aあるいはdsRNAS1bを持っていました。dsRNAS1a、dsRNAS1b はサイズが若干異なるバリアントで、再編成を受けており、dsRNA1由来のRdRp のORF2を2コピーもっていました。しかしdsRNA2由来の配列はかけらも検出されませんでした。また、RnMBV1/RS1の出現を経時的にモニターすると、野生型ウイルスの粒子導入後、初めdsRNA1だけをもつウイルスが現れ、それを継代培養するとdsRNAS1a、dsRNAS1bが現れてきました。また、RnMBV1/RS1のゲノムRNAの蓄積量、感染白紋羽病菌の病原力を調べた結果、蓄積量は野生型ウイルスの70%程度に、病原力はウイルス非感染株に匹敵するくらい回復していました。
これらの成果は、研究室で維持する限り、RnMBV1のdsRNA2は複製に必須ではないが、効率的複製、宿主の病原力の衰退させるのに必要であることを示します。理由はよくわかりませんが、RnMBV1は2つのセグメントがあって、安定化するという居近江深い性状をもっているようです。また、RnMBV1の野外分離株すべてdsRNA2を持っていることから、自然環境中での生存にはdsRNA2は必要であることが示唆されます。これらの成果は、筆者らが開発した精製粒子を用いた人工感染法を用いることにより得ることが可能となりました。
尚、本論文はVirology のHighlight Article に選ばれました。。(文責:鈴木信弘)

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