菌類に感染するマイナス鎖RNAウイルスをはじめて発見しました

[著者] Kondo, H., Chiba, S., Toyoda, K. and Suzuki, N.

[論文タイトル] Evidence for negative-strand RNA virus infection in fungi

[掲載論文] Virology 435:201-209 (2013) Rapid Communications

[内容紹介]
ウイルスは設計図としてDNAやRNAをゲノムに持ち、RNAウイルスはさらにプラス(+)鎖RNA、マイナス(-)鎖RNA(mRNAの相補鎖)、二本鎖RNAタイプに大別されます。このうち、(-)鎖RNAウイルスは、人、家畜、魚類、昆虫類などに広く発生し、狂犬病ウイルスやエボラウイルスなどのエマージェングウイルス(いずれもモノネガウイルスに分類される)が有名です。植物ではブニヤウイルスの仲間や狂犬病ウイルスと同じラブドウイルス科のウイルスなどが農作物に発生問題し問題になっています。一方、菌類(カビ)にも多様なRNAウイルスの存在が報告されていますが、その多くが二本鎖RNAウイルスや(+)鎖RNAウイルスであり、これまで(-)鎖RNAウイルスの存在は全く知られていませんでした。本論文では菌類の核ゲノムデータベースを網羅的に検索し、植物病原糸状菌であるうどんこ病菌(Erysiphe pisi)のゲノムにモノネガウイルスの複製酵素L遺伝子に類似した配列(いわゆるウイルス化石配列)を発見しました。これは、(-)鎖RNAウイルスが嘗て菌類に感染しその部分配列が宿主染色体に挿入されることを示唆します。さらに、植物病原菌(ダラースポット病菌, Sclerotinia homoeocarpa)の転写物データベースにL遺伝子の全長領域をカバーする長いウイルス様配列が見出され、(-)鎖RNAウイルスが現存することが強く示唆されました。また、これらの配列は、既知のモノネガウイルスとは明らかに異なりました。以上から、モノネガウイルスに類似したユニークな(-)鎖RNAウイルスが菌類に存在する(また嘗て存在した)と考えられます。なお、本論文は掲載号の“Highlighted Articles”の1つに選ばれました。

20130207
(文責:微生物相互作用グループ・近藤)

関連リンク: 植物・微生物相互作用グループ