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目立たないウイルスの複製・病原性を抑制するウイルス/宿主因子

[著者] Chiba, S., Lin, Y.-H., Kondo, H., Kanematsu, S and Suzuki N.

[論文タイトル] Effects of defective-interfering RNA on symptom induction by, and replication of, a novel partitivirus from a phytopathogenic fungus Rosellinia necatrix.

[掲載論文] Journal of Virology, vol. 87, pp 2330-2341. (2013) doi: 10.1128/​JVI.02835-12

[内容紹介]

パルティティウイルス科の構成員は植物,菌類,原生動物に無病徴感染する「目立たない」ウイルスです。これらは、2分節型2本鎖RNAをゲノムにもち、それぞれのセグメントに複製酵素(RNA1)と外被タンパク質(RNA2)をコードする最も単純なウイルスの一種と言えます。ところが、白紋羽病菌W57株から分離された新規パルティティウイルス(Rosellinia necatrix partitivirus 2, RnPV2)を解析した結果、2本のゲノムセグメントに加えRNA1由来の欠損干渉性RNA(defective interfering RNA, DI-RNA)を保有することが判明しました。

本論文では、この半端なゲノムRNA(DI-RNA)による正規ゲノムRNAの機能阻害を自然宿主菌と実験宿主菌を用いて詳細に解析しました。まず、当研究室で開発した粒子トランスフェクション法により、DI-RNA保有ウイルス株RnPV2-DI(+)およびDI-RNAフリー株RnPV2-DI(-)を得ました。殆どすべての2本鎖RNA ウイルスは、人為的に接種することが困難です。この成果は、DI-RNAをパルティティウイルスから除去した初報告となります。次に、RnPV2-DI(+)の蓄積量はRnPV2-DI(-)に対して約400倍低く、ウイルス複製はDI-RNAにより顕著に抑制されることが示唆されました。実験宿主としてクリ胴枯病菌を用いたところ、類似の結果が得られました。さらに,クリ胴枯病菌のRNAサイレンシング欠損変異株(Ddcl-2)では、野生株に比べRnPV2の蓄積量はDI-RNAの有無に拘らず顕著に上昇しました。両者は、Ddcl-2で激しい病徴を引き起こしましたが、野生株および白紋羽病菌では無病徴感染するか極めて穏やかな病徴を引き起こしました。

以上のように、パルティティウイルスの複製・病徴発現がDI-RNAと宿主RNAサイレンシングで顕著に抑制されることが初めて示されました。「目立たないウイルス」でも宿主に感知され、RNAサイレンシングという抗ウイルス防御反応の標的になるということが明らかになりました。

尚、本研究は果樹研究所との共同研究として行われました。
(文責:微生物相互作用グループ・鈴木)

関連リンク: 植物・微生物相互作用グループ

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