白紋羽病菌から分離された新規ハイポウイルス様1本鎖RNAウイルス

[著者] Zhang R, Liu S, Chiba S, Kondo H, Kanematsu S, and Suzuki N.

[論文タイトル] A novel single-stranded RNA virus isolated from a phytopathogenic filamentous fungus, Rosellinia necatrix, with similarity to hypo-like viruses.

[掲載論文] Frontiers in Microbiology, Vol. 5, 360.(doi: 10.3389/fmicb.2014.00360)

[使用した共通機器] 超遠心機、DNAシークエンサー

[共同研究] 果樹研究所・兼松聡子博士

[内容紹介] 白紋羽病菌(Rosellinia necatrix)は土壌生息性の子のう菌で、本邦の果樹生産現場で非常に問題となっている植物病原糸状菌です。その防除は困難であることから、私共は農薬に代わる防除法として、生物防除の一種であるヴァイロコントロール(ウイルスを用いた糸状菌病の生物防除;VC)の開発を果樹研究所と共同で進めています。現在までにVCに資する有望な2本鎖RNAウイルスをはじめ、VCに適さないものの学術的に重要な新規RNAウイルスを多数分離し、詳細に解析してきました。現在も本防除法の核となる菌類ウイルスのハンティングを継続しており、今回の論文では、新しい特徴を持った1本鎖RNAウイルスの分離とその性状解析を報告しました。

今回分離されたウイルスは、Fusarium graminearum virus 1 (FgV1)という既報のウイルスとの類縁関係が認められ、クリ胴枯病のVCに用いられたハイポウイルス科のメンバーとも進化的に遠縁であることが分かりました。約6.3kbのプラス鎖RNAゲノムは、2つの遺伝子を並列に保持しております。前方は複製関連酵素を、後方は比較的小さな機能未知タンパク質をコードすると推測されました。FgV1との間で、複製関連酵素保存領域で38-66%、機能未知タンパク質で20数%の配列相同性を示します。また、ゲノム3’末端には細胞由来mRNAのようにpoly(A)を持つほか、粒子を形成しない(菌類のウイルスではそんなに珍しいことではありません)ことも明らかとなりました。さらに、菌類トランスクリプトームのデータベース上には類似配列が多数発見され、FgV1と本ウイルスの2種以外にも関連ウイルスが存在する事が示唆されました。

以上から、FgV1に近縁なウイルスをフザリウイルス(fusarivirus)と呼称する事とし、本ウイルスをRosellinia necatrix fusarivirus 1(RnFV1)と命名しました。残念ながらRnFV1にはVCに資する能力はありませんでした。しかし、ウイルスとしての新規性から、FgV1と共に新しいウイルス科(フザリウイルス科)の創設を提案することができました。RnFV1は、白紋羽病菌から分離された初めてのプラス鎖RNAウイルスとなりました。

(文 責:鈴木信弘)

お問い合わせ先:植物・微生物相互作用グループ・鈴木信弘