ウイルスのモデル糸状菌宿主としてのクリ胴枯病菌

[著者] Eusebio-Cope, A., Sun, L., Tanaka, T., Chiba, C., Kasahara, S., and Suzuki, N.

[論文タイトル] The chestnut blight fungus for studies on virus/host and virus/virus interactions: from a natural to a model host

[掲載論文] Virology. doi.10.1016/j.virol.2014.09.024

[内容紹介] Cryphonectria parasitica(子のう菌の1種)は世界3大樹病の一つであるクリ胴枯病の病原ですが、同時に多様なマイコウイルスの宿主でもあります。本稿では、ウイルス・宿主相互作用研究のモデル糸状菌としての地位を確立しつつある本菌の特長、この系を舞台に進められた最近の研究例を概説し、さらに新たに確立した細胞内局在マーカーのデータを紹介しました。クリ胴枯病菌では、いまだ完全ではないですがアノテーション付きのゲノム配列情報も利用可能で、ゲノムの人工操作法(多重遺伝子破壊、遺伝子発現等)、各種ウイルスの精製粒子を用いた人工接種法、数は限られますが数種ウイルスに対する逆遺伝学が整備されています。関連する研究ツール・生物リソース(自然変異株、人工変異株)も比較的よく整備されています。また、本菌は、分類学上の目が異なる宿主菌(白紋羽病菌)に自然感染していた多くのウイルスの複製を許容します。「目立たないウイルスの複製を制御するDI-RNAとRNA サイレンシング」ならびに「RNAサイレンシングとウイルスRNAゲノムの組換え」というユニークな解析例も紹介しています。他の菌類(例えば、遺伝学のモデル糸状菌であるアカパンカビ等)と比較することで、実験ウイルス宿主としてのクリ胴枯病菌の優位性がよりはっきりと示されました。

尚、本論文は、特集号「Viruses of Microbes III」に掲載されました。

(文 責:鈴木信弘)

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